【為替本日の注目点】ECBの4年9カ月ぶりの利下げにもユーロは上昇

為替

サーチナ

2024/6/7 10:49

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 ドル円は朝方には156円台で推移していたが、売りが優勢となり155円47銭まで下落。ユーロドルでドルが売られてユーロが買われたことが円にも波及した格好。ECBが予想通り利下を決めたものの織り込み済みだったことと、追加利下げへの言及がなかったことでユーロは買われる。株式市場はまちまち。ダウは3日続伸するも、S&P500は小幅安。債券は反落。長期金利は4.28%台へと小幅に上昇。金と原油は続伸。

新規失業保険申請件数 → 22.9万件

4月貿易収支 → -74.6b

マーケット情報

ドル/円 155.47 ~ 156.44

ユーロ/ドル 1.0865 ~ 1.0902

ユーロ/円 169.28 ~ 170.29

NYダウ +78.84 → 38,886.17ドル

GOLD +15.40 → 2,390.90ドル

WTI +1.48 → 75.55ドル

米10年国債 +0.012 → 4.287%

本日の注目イベント

日 4月景気先行指数(CI)(速報値)

日 4月景気一致指数(CI)(速報値)

中 中国 5月貿易収支

独 独4月貿易収支

独 独4月鉱工業生産

欧 ユーロ圏1-3月期GDP(確定値)

米 5月雇用統計

米 4月消費者信用残高

加 カナダ5月新規雇用者数

加 カナダ5月失業率

 ECBは事前予想通り、中銀預金金利を25bp引き下げ3.75%にすることを決めました。4年9カ月ぶりの利下げでしたが、「インフレ見通しが著しく改善した」との認識を示すとともに、物価見通しも引き下げましたが、「政策金利を必要な限り十分に景気抑制的な水準に保つ」と、声明文ではややタカ派的だったことと、追加利下げへの言及もなかったことで、発表後ユーロドルは買われ、1.09台に乗せる場面もありました。ラガルドECB総裁は会見で、「今日から利上げを巻き戻す段階に移行するのかと聞かれれば、そうだとは言わない。その可能性は極めて高いが、データ次第だろう。非常に不確実なのは、われわれが進むスピードとそれに要する時間だ」と述べ、その上で、「委員会は引き続き、会合ごとのアプローチを取る。特定の金利の道筋をあらかじめ約束はしない。利下げ決定は1人を除く全員が同意した」と説明しています。反対した1人は、オーストリア中銀のホルツマン総裁だったことも判明しています。

 ホルツマン氏は、先月メディアとのインタビューで、「現状通りであれば来週の利下げを支持するが、追加措置が自動的であってはならないとも警告するだろう」と述べており、今回の会合で自身が唯一の反対者だったことを認めています。一方、ドイツ連銀総裁とオランダ中銀総裁が賛成したことにはやや意外感があります。

 第2次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦(Dデー)80周年を記念する式典に出席するためフランスを訪れたバイデン大統領は式典で演説を行い、「第2次世界大戦の終結以降いずれの時点よりも、民主主義が世界中で危機にさらされている。そういう時代に、われわれは生きている」と述べ、直接名指しはしなかったものの、ロシアのプーチン氏とトランプ氏を念頭に、民主主議への脅威を警告していました。(ブルームバーグ)また米国とNATOが一致して、これからもウクライナを支援すると述べており、バイデン氏はこの後ウクライナのゼレンスキー大統領とも会談する模様です。

 昨日の朝方、日銀の中村審議員は札幌市で講演を行い、現時点の経済データに基づけば、「当面は現状の政策維持が妥当と考えている」と述べ、今後の利上げの可能性には言及しませんでした。ドル円はこの発言でやや買われる場面もありましたが、同氏が審議委員の中では「ハト派」と見られていることもあり、大きな動きには至っていません。翻ってみれば、G7諸国がインフレ阻止のためこぞって利上げ競争に参加した2020年でしたが、基調的なインフレ率はまだ低いとの認識から利上げ競争には加わらず、今度は各国が利下げのタイミングを模索する中、利上げのタイミングを計っている日銀。長い間デフレに苦しめられた日本は、欧米諸国と異なりどこか異

質なのかもしれません。前日のカナダに次いでECBも利下げに踏み切り、これで3月のスイス、5月のスウェーデンに次いで主要国では4番目になります。各国ともインフレの危機を完全に脱したとは言えないまでも、それなりの根拠があり利下げを決めたわけで、これらの決定がFRBの政策にも影響してくることも考えられます。世界経済は極めてグローバルにつながっています。本日は米5月の雇用統計が発表されます。この欄でも何度も触れているように、好調な米労働市場にもさすがに鈍化の兆しが見えてきました。その決定打になるのか、あるいは依然として粘り腰を見せるのか、非常に重要なデータになります。

 ドル円の予想は154円50銭~156円50銭といったところでしょうか。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_calender.htm

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