<新興国eye>世界銀行 カンボジア経済アップデート 不動産不況に懸念

新興国

2024/6/28 8:44

 6月6日、世界銀行は「カンボジア経済アップデート2024年6月:輸出回復と貿易のシフト」を発表しました。

 カンボジアの成長率予測については、2020年のマイナス3.1%から、2021年3.0%、2022年5.2%、2023年5.4%、2024年5.8%(前回11月予測5.8%)、2025年6.1%(同6.1%)、2026年6.4%へ回復すると予測しています。高成長は、縫製品等の輸出回復や、観光の回復に支えられているとしています。他方、不動産は厳しい状況が続いており、貸付の伸び悩みや不良債権の増加にも繋がっていると懸念を示しています。

 物価上昇率は、2023年2.8%(同3.0%)、2024年2.8%(同2.8%)、2025年2.7%(同2.7%)、2026年3.0%と予測しています。ロシアのウクライナ侵攻等で2021年6月に対前年同月比7.8%まで上昇した物価上昇率は、2024年3月には0%にまで落ち着いてきています。

 対外収支は、石油輸入価格上昇も一服し、輸出も健闘していることから、経常収支(対GDP比)は、それまでの赤字から2023年に1.7%の黒字に転換しました。2024年2.7%、2025年2.6%、2026年1.6%と黒字が続くと予測しています。財政については、新型コロナ対策で歳出が増加したことから、赤字(対GDP比)は、2021年7.2%にまで上昇しましたが、2023年5.3%、2024年5.5%、2025年4.4%、2026年4.2%へと落ち着いてくると予測しています。

 カンボジア経済のリスクとしては、不動産不況とそれに伴う不良債権の増加等による金融への影響等をあげています。対応する政策としては、銀行監督の強化、財政余力の確保、ビジネス環境の改善、人材開発、物流・電力等のインフラ拡充を提言しています。

 なお、「将来の成長に向けた教育の拡充」と題する調査報告も含まれています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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