NTTドコモ・ベンチャーズ、稲川尚之社長にインタビュー
2020/12/17 17:30
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)への注目度が高まってきている。CVCは事業会社の手掛けるベンチャーキャピタルで、専業VCと違い、投資による成果だけを目的としていない。母体事業会社とのシナジー(相乗効果)で成長速度が速まり、結果として財務リターンも大きくなる傾向があり、IPO(新規上場)マーケットにもCVCの出資を受けたベンチャーが多く登場してきている。注目度が高まる中、最大手NTTドコモ・ベンチャーズの稲川尚之代表取締役社長(写真)に聞いた。
事業とのシナジーを最優先
――CVCとは何か。専業VCとの違いを教えてほしい。
「財務的なリターンを求める専業VCに対し、CVCは事業会社としての業務的な付加価値、戦略的なリターンも投資先に求める。われわれで言えば、NTTドコモ(9437、整理)やNTT(9432)グループの事業とのシナジーが重要。ICT領域における新事業創出の手助けになるような投資先を探している。NTTドコモはスローガンとして『いつか、あたりまえになることを。』を掲げている。われわれはそれを投資の力で実現していきたい」
――これまでの歩みと、特徴、強みは。
「2008年にNTT傘下のファンドとして誕生し、グループ内から資金を調達して複数のファンドを運営。16年にNTTドコモ・ベンチャーズとして一本化し、現体制となった。これまで多数のベンチャー投資を行っており、近年ではメドレー(4480・M)、サイバーセキュリティクラウド(=Sセキュリ、4493・M)、エルテス(3967・M)などがIPOを果たしている。今年もRetty(7356・M)、アララ(4015・M)がIPOした。投資を受けたベンチャーも、NTTドコモやNTTグループと組むことで成長が加速する可能性が高く、当社による出資がベンチャーのブランド価値になるような存在になっていきたいと考えている」
――投資対象の選別などで重視すること、また投資の方向性などはあるのか。
「当然、IPOなどで財務リターンも求めるが、CVCであるため、事業とのシナジーは重要視する。当社にはICTビジネスの最前線で戦うエキスパートが多く、目利きに自信を持つ。キャピタリストとしての観点に加え、『NTTと組んだら、この新しいサービスは成長する、はやる』といった観点が大事。米シリコンバレーにも拠点を持ち、先端技術にも精通している」
「遠隔」キーワードにアイデア創出
――通信業界にとって「5G」は大きなテーマ。投資活動にどういった影響があるか。
「NTTドコモは1Gのアナログ通信時代からジェネレーション(通信世代)が変わるたび、『必要ない』と笑われながらもチャレンジを続けてきた。ジェネレーションが変わればイノベーションが起きる。NTTドコモにはチャレンジを続けてきた実績と、世の中を変えてきた自負がある。通信網に『何を乗せるか』はチャレンジ。自動運転や医療分野だけでなく、広義での『遠隔』というのは5G時代の大きなキーワードになると考えている」
――新型コロナウイルスが与えた影響は。また、今後のトレンドなどに影響は出るのか。
「一時的に経済を停滞させたかもしれないが、通信分野に関しては新たなビジネスアイデアの創出を加速させている面がある。『遠隔』というキーワードが色濃くなるのも、コロナの影響がある。人と人とが直接対面しなくてもサービスが提供できるアイデアが投資先、投資候補先からあふれており、そこからイノベーションが起きる可能性がある」
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