米4月雇用統計、非農業部門雇用者数は前月比26.6万人増―市場予想を大幅に下回る
2021/5/10 9:38
<チェックポイント>
●追加現金給付などで求職活動が消極化
●業種別、レジャー・接客が急増の一方、自動車・同部品が急減
●失業率6.1%―13カ月ぶりに上昇
米労働省が7日発表した4月雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比26万6000人増と、3月の同77万人増(改定前は91万6000人増)や市場予想の同100万人増を大幅に下回った。4カ月ぶりに伸びが鈍化した。市場では、4月の有効求人倍率が1.1倍と、求人需要が強いにもかかわらず、それ以上に雇用の供給(求職者数)が不足したため、雇用のミスマッチが起こり、雇用者数の伸びを低く抑えたとの見方や、政府の1.9兆ドルの景気追加支援策で、生活者一人当たり1400ドルの追加現金給付を受けた労働者が積極的な求職活動を行わなかったとの見方がある。
非農業部門雇用者数の伸びが市場予想の4分の1にとどまったことを受け、米10年債利回りが1.495%と、0.066ポイント低下し、FRB(米連邦準備制度理事会)の量的金融緩和のテーパリング(段階的縮小)観測が後退。一方、ダウ工業株30種平均は統計発表後、上昇した。
業種別では、建設業は前月比ゼロ人と、増減がなかった半面、製造業は3カ月ぶりに減少。特に、自動車・同部品が急減(2万7000人減)した。一方、パンデミック(感染症の世界的大流行)の影響を最も強く受けたサービス業は3月に比べ、伸びは鈍化したものの、増加が続いている。なかでもレジャー・接客業(主にレストラン・バーなどの飲食業)が好調な伸びとなった。それとは対照的に、小売業と運輸・倉庫業は大幅減少に転じた。
過去3カ月間(2-4月)の月平均の雇用者数の伸びは4月が減速したものの、52万4000人増となり、2月時点の15万4000人増や3月時点の51万3000人増を上回った。4月の月平均の雇用者数の伸びは3カ月連続で加速した。
失業率は6.1%と、3月の6.0%から13カ月ぶりに上昇し、市場予想の5.8%よりも悪化した。ただ、市場では、失業率の上昇は仕事を探すため、雇用市場に参入する労働者が増えたためで、米経済にとっては良い兆候と見ている。
一方、市場では働きたくても仕事が見つからず、労働市場を去っている数百万人の労働者予備軍を失業者に含めると、失業率は数ポイント上昇し、9%超になっているとみている。
広義の失業率(狭義の失業者数に仕事を探すことに意欲を失った労働者数と経済的理由でパート労働しか見つからなかった労働者数を加えた、実質の失業率)は、季節調整後で10.4%と、3月の10.7%を下回り、2カ月連続で低下した。
労働市場への参加の程度を示す労働参加率(軍人を除く16歳以上の総人口で労働力人口を割ったもの)は61.7%と、3月の61.5%を上回った。20年11月と12月の61.5%や10月の61.6%を上回っており、労働市場の改善ペースが加速した。
一時帰休による失業者のピークは20年4月の1804万7000人(失業者全体の78%)だったが、それから12カ月経過した4月時点で211万4000人(同22%)に低下した。12カ月間で約1593万3000人が職場復帰したことを意味するが、職場復帰率はまだ88%だ。
市場が注目していた賃金(平均時給)の伸びは前月比0.7%(21セント)増と、雇用需要の拡大を反映し、3月の同0.1%(4セント)減や市場予想の同0.1%減を上回った。
なお、市場では新型コロナワクチン接種の普及と、1400ドルの個人向け現金給付などバイデン大統領の1.9兆ドルの追加景気刺激策により、春から夏にかけて雇用回復ペースは速まるとの見方が根強い。パウエルFRB議長も3月の講演で、「完全雇用となるまでにはまだ時間がかかるが、今後数カ月、雇用者数は上向くと見られる十分な根拠がある」と指摘している。ただ、21年末まであと8カ月間で雇用者数がパンデミック前の水準に戻るには月100万人増のペースで増加する必要があり、まだ先は長い。パンデミック前の雇用者数(事業所統計ベース)は約1億5250万人で、4月現在の雇用者数は1億4430万人なので、まだ820万人足りていない。パンデミックで失われた雇用のすべてを取り戻すには1年以上かかる見通しだ。
<関連銘柄>
NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、
SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>
NYダウベア<2041.T>
提供:モーニングスター社
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