STIフードの十見社長に聞く――国内戦略、海外展開ビジョンは?

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2021/8/23 17:31

 水産食品のSTIフードホールディングス(2932・(2))が順調に収益を積み上げている。一貫製造へのこだわりがカップサラダをはじめとする人気商品を生み出し、顧客や消費者の支持を獲得。長期的には米国展開が控え、業績成長の基調が続く同社の十見裕社長に今後の展望を聞いた。

今期売上見通しに上積み余地

 ――業績・配当の今12月期計画を上方修正した(連結営業利益15.7億円→17.3億円<前期比32%増>、年間配当45円→55円<前期は40円>)。

 「定番品の量産効果や原価低減、物流の見直しで収益性が改善した。しかし、売上高の見通し(260億円、前期比13%増)については増額に至らず満足していない。コンビニエンスストアに続く新たな販路として、高級スーパーなど複数の案件が固まりつつあるが、まだ見えない部分が残る。この一部が具体化すれば上積みの余地も出てくるだろう」

 ――主力のセブン&アイ・ホールディングス(=7&iHD、3382)グループのセブン―イレブン・ジャパン向けに、カップサラダが好調に推移している。

 「水産物と野菜を取り合わせ、おいしくアレンジしたシリーズだ。前期の終盤に本格投入し、代表商品の『たことブロッコリーバジルサラダ』などが爆発的に売上を伸ばしている。セブンイレブン向けでは既に定番化している焼き魚が安定して収益を稼いでいるが、このカップサラダはまだ緒に就いたばかり。高成長が見込まれる。サーモンを使った次の柱の商品を開発中だ」

調理技術に強み、国内投資は仕上げ段階へ

 ――競合も出てくるのでは?

 「その点は負けない自信がある。なぜならわれわれは調達から調理、出荷までを完全に一貫して行い、品質を高めるために駆使するさまざまな技術で他社を圧倒している。例えばタコなら、最適な食感を下処理の段階から追求するなどして魅力ある総菜をつくり上げている」

 ――おいしい総菜を企画し具現化できる技術と一貫生産体制で、国内最大手のコンビニのPB(プライベートブランド)戦略を支えてきた。多方面から商品開発の引く手があるのはその実績が評価されているためか。

 「そのほかに、大きな供給力を備えていることも重要な要素だろう。また、やはり昨年の株式公開で信頼度や知名度が高まったことも影響しているように思う」

 ――供給力の話が出たが、生産体制のあり方については。

 「現有の10工場に、買収する最終候補をほぼ絞り込んだ近畿圏の新拠点が加わり、今期末に稼働する。これにより手薄だったエリアをカバーし、東北のSTIミヤギ(宮城県石巻市)でも新ラインを整備することで全国を網羅する理想的な出荷体制が完成する。さらに、千葉県の船橋工場が手狭になってきた首都圏では、新工場の建設も予定している。国内の設備投資はそれで一巡する」

米国も7&iHD支える、工場は西海岸有力

 ――その後はいよいよ米国展開が始まる。

 「その直前に当たる2025年12月期に、売上高500億円を目指している。納得のいく条件を維持した上で視野に入る国内市場の到達点は、その水準と考えている。さらに成長していくためには海外に出る必要があり、顧客はやはり米国のコンビニ事業を加速する7&iHDだ。同社はハワイ州で日本式のコンビニを成功させており、本土でもそれを再現していくためのお手伝いをさせてもらう」

 ――現地での生産はどうしていくのか。

 「まずは1つ工場を持つ。効率を考えれば既存の施設を買収する方法が妥当だろう。場所は西海岸が有力で、1拠点あればコンビニ3000店ほどに供給できる。焼成、ガス置換パック(注)といった独自技術と一貫生産の体制をあちらでも展開する。大きな投資になるのは確かだが、売上高も増えるので減価償却費の比率は一定内に収まるとみている」

 ――魚価を含め、原材料価格が上昇している。

 「値上げを進める方針だ。もはやデフレではない。もちろん消費者に納得してもらえるだけの付加価値も提供するつもりだ。また、参入障壁の高さや、共同開発を通じて構築してきた関係性により、出荷先にも理解を得やすい立場にある」

 (注)同社は焼き魚の工程で特別な焼成機や赤外線バーナーを駆使してうまみを追求している。また、パックの空気を一瞬で窒素ガスと入れ替えるガス置換パックの技術は、調理した魚の劣化を防ぐ。

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