信託報酬は将来のリターン押し下げ要因、「低コスト・高パフォーマンス」なアクティブファンドに注目
2021/10/25 9:25
運用成績に優れる低コストのアクティブファンドに注目したい。アクティブファンドでは、銘柄調査・選択などポートフォリオ構築にかかる手間がファンドによって異なるため、信託報酬にも差がある。信託報酬の差が運用成績に直結するパッシブファンド(同じインデックスをベンチマークとする場合)と違って、高コストであってもそれに応じたリターンを獲得できていれば良いと言えなくもない。とはいえ、手間をかけた高コストファンドが良好な運用成績を挙げる保証はなく、投資家からすれば、将来のリターンを確実に押し下げる信託報酬は低いにこしたことはない。運用成績は過去のものであるが、一定の期間にわたって良好な成績を挙げてきた点は評価できる。
国内株式、国際株式に投資するアクティブファンド(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、及びETF除く)について、21年9月末時点のモーニングスターレーティングが「5ツ星(★★★★★)」、モーニングスターフィーレベルが「安い」に該当する純資産残高10億円以上のファンドを抽出した。
モーニングスターレーティングは、運用期間3年以上のファンドを対象に、リスク調整後リターンがその属するモーニングスターカテゴリー内でどの水準にあるかを5段階で表したもので、5ツ星は最も運用効率が優れていることを示す。フィーレベルは、「国内株大型・アクティブ」や「国内株大型・パッシブ」といったように、投資対象資産とアクティブ、パッシブによってカテゴリーを設け、個別ファンドの信託報酬がその属するカテゴリー内でどの水準にあるかを5段階で表したもの。「安い」は最も低コスト水準であることを示す。
国内株式アクティブファンドでは、規模(大型・中型・小型)と投資スタイル(グロース、バリュー、ブレンド)からなる全9カテゴリーを対象とした。条件を充たすファンドは9ファンドあり、残高上位3ファンドは、「年金積立Jグロース」(愛称:つみたてJグロース)「コモンズ 30ファンド」「利益還元成長株オープン」(愛称:Jグロース)となった。「年金積立Jグロース」と「利益還元成長株オープン」はマザーファンドを同一とするファンドで、財務基盤、経営能力、事業環境、競争力などの観点から、成長性が高く株主への利益還元が期待できる企業に投資する。「コモンズ 30ファンド」は、収益力、競争力、経営力、対話力、企業文化という5つの評価軸から厳選した30社程度に長期的に投資する。「年金積立Jグロース」と「コモンズ 30ファンド」はつみたてNISAの対象ファンドでもある。
国際株式アクティブファンドでは、日本を含む先進国の株式に投資する「国際株式・グローバル・含む日本(為替ヘッジなし)」について調査した。日本を除く先進国の株式に投資する「国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジなし)」、および北米株式に投資する「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」には該当するファンドがなかった。
条件を充たしたのは6ファンドで、残高上位3ファンドは「ニッセイ SDGsグローバルセレクトファンド(資産成長型・為替ヘッジなし)」、「キャピタル 世界株式ファンドF」、「iTrustロボ」となった(「ニッセイ SDGsグローバルセレクトファンド」は「年2回決算型・為替ヘッジなし」が第2位となったが、残高の多い「資産成長型・為替ヘッジなし」を選択した)。
「ニッセイ SDGsグローバルセレクトファンド(資産成長型・為替ヘッジなし)」は日本を含む世界の企業の中から、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に関連した製品・サービスを提供し、株価上昇が期待される企業に投資する。「キャピタル 世界株式ファンドF」は、日本を含む世界各国の株式に投資する。「iTrustロボ」は、日本を含む世界の企業の中から、産業用ロボットやAI(人工知能)などのロボティクス関連企業に投資する。組入銘柄数を見ると、「キャピタル 世界株式ファンドF」は311銘柄(21年8月末時点)と幅広い銘柄へ投資している。一方、「ニッセイ SDGsグローバルセレクトファンド(資産成長型・為替ヘッジなし)」は45銘柄(21年9月末時点)「iTrustロボ」は40銘柄(同)と厳選した銘柄に投資している。
提供:モーニングスター社
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