海外株式見通し=米国、香港

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2021/11/25 9:30

【米国株式の見通し】生活スタイルが支えるホームセンター需要

 11月12日に発表された10月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)が10年ぶりの低水準となり、賃金上昇を上回るインフレ率で米国民の生活水準が悪化しているのではないかという懸念が強まった。しかし、それを払しょくしたのが、16日発表の米小売売上高と、その後相次いで開示された大手小売企業の8~10月の決算だ。

 10月の小売売上高は前月比1.7%増と、年末商戦が早めに始まったことで押し上げられた面はあるものの、インフレ高進が消費支出の抑制につながっていないことを示した。また、小売大手ウォルマート<WMT>とディスカウント大手ターゲット<TGT>、ホームセンター大手ホーム・デポ<HD>、ロウズ<LOW>は4社とも好調な決算を発表している。

 しかし、「エブリディ・ロウ・プライス(EDLP)」を標ぼうするウォルマート、およびディスカウントを売りとするターゲットは、粗利率に悪化が見られる中でも値上げを急がない姿勢を示したことから、決算発表後に株価が下落。一方で、ホーム・デポとロウズは、昨年の巣ごもり特需の反動減でDIY需要が減少する中でもプロの手によるリフォーム需要の復調をとらえて単価引き上げに成功した。背景に堅調な住宅市場があり、住宅建設大手レナー<LEN>やDRホートン<DHI>の株価は10月から上昇に転じた。

 米国人の生活スタイルとして、休日に自宅と敷地の手入れを念入りに行うことが挙げられる。それは、生活環境の変化に応じて住み替えを行う際に、中古住宅市場で高値売却できるよう準備を怠らないためという側面が大きい。住み替えの都度、住宅資産価値が上昇すれば「豊かな老後」が送れる。このため米国人にとって、ホームセンターの重要性は日本人が一般的に想像する以上のものだ。

【香港株式の見通し】明暗を分けるJDドットコムとアリババの株価

 中国電子商取引大手の2社、JDドットコム(9618/HK)とアリババ(9988/HK)の株価推移を見ると、昨年10月ごろまでは同様の動きだが、アリババ傘下で電子決済サービス「アリペイ」を運営するアント・グループの上場が中国政府によって取りどめとなった同11月以降、アリババの株価は長期下落傾向をたどっている。それに対し、JDドットコムは今年2月~7月ごろまでの調整から反転上昇し、年初来高値に接近しつつある。

 アリババの直近2021年7~9月は、売上高が前年同期比29%増だが、調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は同32%減に落ち込んだ。売上高と調整後EBITDAの四半期ごとの推移では、どちらも20年10~12月をピークに低下しており、株価はおおむねこれに見合った動きを示している。クラウドコンピューティング部門の売上高が2年前の同四半期から約2.2倍に拡大しているのは好材料だが、売上構成比や利益貢献度から見ると株価下支えには力不足と言え、中国経済の減速と政府の規制強化が引き続き株価の重しになると考えられる。

 その一方、JDドットコムの21年7~9月は、売上高が前年同期比26%増、営業利益が同41%減とアリババと同様に増収減益だったが、6月18日の創立記念日に合わせた大型セールや11月11日のアリババ「独身の日」セールを含む年末商戦の影響をならせば、四半期ベースでもおおむね右肩上がりの売上拡大傾向を示している。

 また、同社は今年9月にオフラインストアの「JDMALL」をオープンし、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を通じた「没入型」のオムニチャネルのショッピング体験を消費者に提供するなど、減益であっても先行きの収益を押し上げる前向きな設備投資として市場から好感されているように見受けられる。さらに、同社は傘下にJDロジスティックスを擁する物流網での強みを生かしてシェア拡大が見込まれる。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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