【為替本日の注目点】ユーロ圏8月のCPIは9.1%と過去最高

為替

サーチナ

2022/9/1 10:47

 ドル円は前日と同じ展開。上値が重く、138円台前半で取引が始まったが、その後米長期金利が上昇したことで139円までドルが買われた。ユーロドルも小幅に上昇。ユーロ圏の8月のCPIが予想を上回ったことで1.0079まで上昇。ユーロは対円でも約1カ月ぶりに139円台後半まで続伸。株式市場は続落。地区連銀のタカ派発言や、FRBが利上げ姿勢を長期にわたり維持するとの観測が重しに。ダウは280ドル下げ、S&P500は4000の大台を割り込む。債券は続落。長期金利は3.19%台と、2カ月ぶりの高水準に。金は4日続落。原油も大幅に続落し90ドルを下回る。

マーケット情報

8月ADP雇用者数 → 13万2000人

8月シカゴ購買部協会景気指数 → 52.2

ドル/円 138.45 ~ 139.00

ユーロ/ドル 0.9982 ~ 1.0079

ユーロ/円 138.43 ~ 139.73

NYダウ -280.44 → 31,510.44ドル

GOLD -10.10 → 1,726.20ドル

WTI -2.09 → 89.55ドル

米10年国債 +0.090 → 3.193%

本日の注目イベント

中 8月財新製造業PMI

独 8月製造業PMI(改定値)

欧 ユーロ圏8月製造業PMI(改定値)

欧 ユーロ圏7月失業率

英 8月製造業PMI(改定値)

米 新規失業保険申請件数

米 8月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)

米 8月ISM製造業景況指数

米 8月自動車販売台数

米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演

米 バイデン大統領、演説(ペンシルベニア州フィラデルフィア)

 ドル円は神経質な動きを見せながらも底堅く、139円台を固める動きにも思えますが、やはり明日の雇用統計を前に、値幅もやや縮小しています。東京時間では、水準が水準だけに、実需のドル売りが出ていることもあり、上値の重い展開が続いていますが、米10年債利回りの上昇がドルの支えになっています。米10年債利回りは3.194%台まで上昇し、6月28日以来となる高水準まで来ました。FRBが長期にわたって利上げ姿勢を維持するとの観測が債券売りにつながっていますが、売られているのは債券だけではなく、株式、コモディティなど、「世界的に中央銀行がインフレとの闘いを強化する中、あらゆる相場が下落しているが、目先もそれほど楽観的なものではなさそうだ」(ブルームバーグ)との見方が適切のようです。

 NY株式市場では先週末、ジャクソンホールでのパウエル議長の講演をきっかけにダウが1000ドルを超える下げを見せましたが、今週に入ってもその流れは変わらず、株価の下げが続いています。多くの株式専門家も「まだ下げは終わっていない」とのコメントを残しており、その背景にはFRBが景気よりもインフレ抑止を政策の基本に据えていることが挙げられます。パウエル議長は講演で、「企業や家計が痛みを伴うこともある」と述べていましたが、その痛みも「相当大きくて深い」と「覚悟」しなければならないようです。

 クリーブランド連銀のメスター総裁は31日の講演で、「来年の早い時期までフェデラルファンド(FF)金利を4%をいくらか上回る水準に引き上げて、そこで維持する必要があるというのが私の現在の認識だ」とし、「当局が来年FF金利の誘導目標を引き下げるとは、私は見込んでいない」と述べています。市場の一部には、FRBはターミナルレートを4%を超える水準まで引き上げるとの観測はあるものの、FOMCメンバーの一人がその水準を見込んでいるとの発言はかなり「タカ派的」でした。さらに金融緩和への移行は「2023年度中にはない」との予測も、かなり大胆なものと言えます。この発言が株式と債券の売りに拍車をかけたと思われます。

 ただ、昨日発表された8月のADP雇用者数の結果を見ると、やや異なる景色も見えてきそうです。民間の雇用統計である8月ADPは「13.2万人」と、市場予想の「30万人」を大きく下回り、マイナスだった2021年1月以来の低水準でした。ADPは統計手法を見直しており、先月はデータの発表を停止していました。昨日の発表によると、7月分は「27万人の増加」でしたので、そこそこいい数字です。業種別では、娯楽、ホスピタリティなどが増加している一方、金融、情報、教育、ヘルスサービスでは減少しており、ADPのエコノミストは「雇用が過熱気味に増加していた局面から、より通常のペースへと移る転換点にあるのかもしれない」と説明しています。ADP雇用者数と雇用統計に、明確な相関関係はないと度々指摘していますが、明日の雇用統計では「30万人の増加」が予想されており、そろそろ好調な労働市場にもFRBの積極的な利上げの影響が出て来てもいいのではと、個人的には考えています。

 ユーロ圏8月の消費者物価指数(CPI)の発表もNY市場へ波及した可能性があります。同指数は「9.1%」と、市場予想を上回っただけではなく、これで、4カ月連続で過去最高を更新しました。現時点では米国のCPIを上回る高水準で、今月8日の政策委員会では大幅利上げは避けられないとの見方が強まってきました。多くのものが値上がりしていますが、特にロシアの影響もあり、エネルギーの値上がりが全体を押し上げています。8月のエネルギーの上昇率は「38.3%」と他に比べ突出していましたが、それでもここ半年を比較した場合、4月の「37.5%」に次いで低い上昇率になっています。ここ半年の上昇率は平均でほぼ40%になっています。この発表を受けて政策メンバーのオーストリア中銀のホルツマン総裁は「インフレ率を下げるというのがわれわれの立場と願いであり、そこに甘い顔を見せる理由は見当たらない」として、0.5ポイントを上回る利上げ決定を支持する考えを示しています。これまで足元でインフレが高進する状況の中でも、ロシアとウクライナの影響により景気が大きく減速していることで、FRBに比べ積極的な利上げ姿勢を示してこなかった政策メンバーが多く見受けられましたが、足元に火がついた現在、悠長なことを言っていられなく、今後0.75ポイントの利上げに向けた意見のすり合わせが焦点になってきそうです。政策メンバーの中では依然として利上げ幅を巡って意見の違いがあるのも事実です。仮に大幅利上げに踏み切ったとしたら、下落基調が鮮明なユーロのハドメになるのか、この辺りも注目したいと思います。

 本日のドル円は138円50銭~140円程度を予想します。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

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