【為替本日の注目点】市場介入を受けドル円乱高下

為替

サーチナ

2022/9/26 10:45

政府日銀による市場介入で140円35銭近辺まで急落したドル円は再び上昇傾向に。NYでは143円45銭まで買われ、この日の高値圏で引ける。ユーロドルは大きく値を下げ、0.9669前後まで下落。約20年ぶりのユーロ安水準を示現。株式市場では再び売りが加速し、3指数が揃って大幅続落。米景気のハードランディングが避けられないとの見方が強まり、株価を押し下げる。債券は反発。長期金利は3.68%台へ低下。金は大幅に反落。一時は1650ドルを割り込む。原油も大幅に売られ、一気に80ドルの大台を割り込み78ドル台に。世界景気の減速を織り込む動きが続く。

マーケット情報

8月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 51.8

8月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 49.2

8月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値) → 49.3

ドル/円  142.68 ~ 143.45

ユーロ/ドル 0.9669 ~ 0.9775

ユーロ/円  138.66 ~ 139.62

NYダウ -486.27 → 29,590.41ドル

GOLD -25.50 → 1,655.60ドル

WTI -4.75 → 78.74ドル

米10年国債 -0.029 → 3.685%

本日の注目イベント

日 黒田日銀総裁記者会見

独 9月ifo景況感指数

欧 ラガルド・ECB総裁、欧州議会の公聴会でスピーチ

欧 OECD経済見通し

米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演

米 カプラン・ダラス連銀総裁講演

米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演

 政府日銀はついに先週22日(木)の午後5時前後に市場介入に踏み切りました。予想していたタミングよりやや早かったと考えていますが、翌日が日本の祝日で東京市場が休場であったことを考えると、ギリギリの選択だったのではないかと思います。

 今考えると、それらしい動きもあったように思います。22日(木)の昼前、それまでやや「壁」となっていた「145円」が抜け、145円33銭までドルが買われ、「いよいよ145円を突破し、上昇に勢いがつくのか」と考えていた矢先、ドル円がわずか10分程度の間に143円30銭前後まで急落した場面です。通常、このような動きは余程の材料がない限り考えにくく、懸命にその材料を探しましたが、見当たりませんでした。想像するに、恐らく何らかの介入の動きや打診のようなものが本邦銀行を通じてあった可能性が高いとみられます。その動きを察知したAIが自動的に発動されたのではないかと思います。財務省の神田財務官のコメントがあったのも午後で、一部邦銀に介入の意思が伝えられたか、漏れた可能性がありそうです。財務官はその後の会見で、介入はまだやっていないとする一方、「ステルスでやる場合も正直ある」と述べ、「必要な時は必ずやることになる」とも強調し、さらに今すぐにでも対応できる状況かとの問いには「そうです」と答えていました。明らかにこれまでの口調とは異なっています。

 市場介入のタイミングを早めたのは日銀の決定会合の結果と、その後の黒田総裁の会見も挙げられそうです。午後3時半から始まった会見で総裁は、一方的な円安に懸念を示しながらも「金融緩和を当面続けることは全く変わらない」と述べると、ドル円は徐々に上昇し、さらに「金利を引き上げることはない」と述べると、ドル円は145円90銭までドル高が進みました。総裁が金融政策に変更がないことを口にするたびに、円が売られる展開でした。このままでは146円台に乗せ、ドルがさらに上昇すると見られたこのタイミングで、24年ぶりとなる市場介入が実施されたことになります。

 「仮に市場介入があれば、3~5円程度円高方向に振れる可能性がある」と予想していましたが、ドル円は140円台までは押し下げられ、その後は神経質に上下を繰り替えし先週末のNYでは143円台半ばまで押し戻されています。日銀は円安を懸念しながらも、円が売られ易い状況を作り出す一方、財務省は円買いドル売りの介入を行うといった、一般投資家からみれば「ややちぐはぐな行動」にも思えるのではないでしょうか。今後ドル円が再び145円台を回復し、再び介入を引き出す展開になったとしても、「その効果は徐々に薄れる」と筆者は予想しています。筆者も現役の頃介入局面には何度も遭遇していますが、その経験からも、介入は繰り返せば繰り返すほどその効果は低減していきます。もっとも、当時は急激な円高が進んでいた時で、今回とは異なり「ドル買い円売り介入」でしたが。

 ドル円の流れは構造的な部分にあって、ドル高傾向は簡単には変わらないと考えます。日米金融当局の金融政策に伴う「金利差」と、日本の常態化した「貿易赤字」から、ドルが買われ円が売られる構図に変化がない限り、人為的に円高にする以外にはなかなか円が買われる状況にはなりにくいのではないでしょうか。円はかつて「有事の円買い」などとも称されましたが、今回のロシアによるウクライナ侵攻でも円が買われる局面はほとんどありませんでした。最近では「有事のドル買い」といった言葉さえ目にします。今回のウクライナ情勢では、エネルギー価格の急激な上昇から「エネルギーに弱い日本」が意識された面さえあります。今後の焦点は、「145円台が介入のメド」ともみられるため、ドル円が再び買われこのレベルに届いた時、再度介入が見られるのかどうかといった点です。また、米国の今回の日本の単独介入に対する認識も重要になるとみています。

 米経済がハードランディングする可能性が徐々に高まってきているようで、NY株式市場はこの動きを織り込み大きく下落しています。ダウは大台の3万ドルを割り込み、2020年12月以来の低水準に沈んだばかりか、高値から20%を超える下落をみせたことから「弱気相場入り」したとの見方も広がっています。金も大きく下げ、WTI原油価格も80ドルを大きく下回ってきました。アトランタ連銀のポスティック総裁は25日CBSの番組で、ソフトランディングの見通しについて「厳しい状況が予想される。容易ではない」としながらも、「経済は比較的、秩序ある形で減速することが可能だ」と述べ、「米金融当局はあらゆる可能な措置を講じるだろう。シナリオは複数ある」と、やや楽観的な見方を示しています。また、パウエル議長はFRBが主催したイベントで、金融政策には言及せず、「われわれは極めて異例な一連の混乱に対応し続けている」と語り、「ニューノーマル(新常態)に入りつつある可能性がある」と述べています。

 本日のドル円は142円~144円50銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_calender.htm

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ