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2022/10/20 9:30

【米国株】米中対立激化でHII、新年度予算はクリーンエネルギーETF注目

 ペンス前米副大統領が過去に例を見ない強硬な表現で中国批判を展開したのは4年前の2018年10月。その際に予感させた米中新冷戦が現実のものになった。そして、今年10月、中国の5年に1度の共産党大会で習近平国家主席が台湾統一をめぐって「決して武力行使の放棄を約束しない」姿勢を強調。任期の5年以内に台湾情勢が緊迫化する事態の到来は不可避となったのかもしれない。

 そのような中で、北朝鮮のミサイル挑発に対する圧力強化も含め、米国がイージス駆逐艦や原子力空母などを極東地域に展開する動きを強めている。また、米バイデン政権が半導体関連製品の中国への輸出規制を強化する新たな措置を発表。原子力潜水艦建造で米2社のうちの1社であるハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)のほか、中国が得意とする電子機器受託製造サービス(EMS)の代替需要の高まりが期待されるジェイビル(JBL)が注目される。

 8月に「歳出・歳入法(インフレ抑制法)」が成立し、バイデン大統領の支持率の好転につながった。その内容(歳出面)は、総額4990億ドルで気候変動対策に3910億ドル、医療保険制度改革などに1080億ドルが充てられた。気候変動対策は「クリーンエネルギー導入に伴う税額控除」「EV(電気自動車)の購入に伴う税額控除」「メタンガス排出量削減対策」などで構成する。

 医療保険制度改革に関しては、21年3月に拡大された公的医療保険の保険料に対する税額控除措置の期限を今年末から25年末まで延長したほか、メディケア(65歳以上高齢者と障害者のための医療保険)利用者を対象に、医療費購入に掛かる年間自己負担額を2000ドルまでにすること、インスリン利用の自己負担額を月額35ドルまでに設定することも盛り込まれた。

 気候変動対策の面からはS&Pグローバル・クリーンエネルギー指数に連動した投資成果を目指すiシェアーズ・クリーンエネルギー ETF(ICLN)が挙げられよう。

【香港株】石炭価格高騰、恩恵を受ける中国神華能源

 石炭価格は発電用燃料に使う石炭(一般炭)に関して、豪州に次ぐシェアのロシア産がウクライナ侵攻に伴う禁輸で供給が限られている。さらに、主に欧州の天然ガス不足で代替需要が高まりやすいこともあり、天然ガスや原油と比較して相対的に価格が下がりにくくなっている。国際指標の豪州産は9月中旬に過去最高値を付け、足元も高止まりするなどほかのコモディティー商品と一線を画する状況だ。一般炭の大半を占める高燃焼効率の「高品位炭」は21年時点でロシアのシェアが3割近くを占めていたもよう。

 中国政府にとっては国内産の方が輸入より安価であることから、物価上昇圧力の緩和のため国内生産を増やしてきた経緯がある。しかし、4月以降はゼロコロナ政策における都市封鎖政策の実施により大幅に減少した。その分、インドネシアなどからの輸入量が増加している。

 中国の石炭最大手である中国神華能源(シェンファ・エナジー)の株価は、石炭の国際相場に連動して堅調に推移。1~6月の業績は、売上高が前年同期比15.0%増の1655.79億元、営業利益が同44.9%増の541.57億元と増収増益だった。18日終値での市場予想のPERは6倍台、予想配当利回りは13%超と割安な水準にある。国内生産量が増えれば、さらなる収益の上ブレも期待される。

※右の画像クリックでグラフ拡大

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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