【為替本日の注目点】米CPIを受け、ドル円一気に140円台前半に急落

為替

サーチナ

2022/11/11 10:23

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 ドル円は10月の米CPIが予想を下回ったことから一気にドル売りが加速し、一時は140円20銭と、9月5日以来となる円高水準を記録。ユーロドルでもドル安が加速。8月以来となる1.02台前半まで上昇。株式市場はインフレのピークアウトを示唆する結果に3指数が大幅高。ダウは1200ドルを超える上昇を見せ、S&P500も200ポイントを超える上昇。債券価格も大幅に上昇。長期金利は3.8%台まで低下する場面も。ドルが売られたことで金は大幅高。1750ドル台まで上昇。原油は小幅に上昇。

マーケット情報

10月消費者物価指数 → 0.4%

新規失業保険申請件数 → 22.5万件

10月財政収支 → -87.8b

ドル/円 140.20 ~ 146.26

ユーロ/ドル 0.9943 ~ 1.0222

ユーロ/円 143.15 ~ 146.09

NYダウ +1201.48 → 33,715.57ドル

GOLD +40.00 → 1,753.70ドル

WTI +0.64 → 86.47ドル

米10年国債 -0.208 → 3.813%

本日の注目イベント

米 NY休場(ベテランズデー)

独 10月消費者物価指数(改定値)

欧 欧州委員会、秋季経済見通し

英 7-10月期GDP(速報値)

英 9月鉱工業生産

英 9月貿易収支

米 11月ミシガン大学消費者マインド(速報値)

 昨日の朝方、あるラジオ番組で為替の話をしましたが、最後にキャスターの方から、「明日の米国のCPIをどのように予想しますか?」と聞かれました。「開けて見なければ分からないとは思いますが、どちらかと言えば、良い結果(CPIの低下)が出るのではないかと予想しています。仮にそうなれば、株価が大きく上昇し、金利が低下し円高が進むことになります」と答えました。あくまでも「勘」でしたが、昨日の夜10時半、米国の10月の消費者物価指数(CPI)は事前予想の「7.9%」に対して「7.7%」(いずれも前年同月比)と発表され、インフレ率の上昇がようやく鈍化してきたことが確認されました。もし「勘」があたれば円高、株高が進むとは見ていましたが、それにしても市場の反応にはすさまじいものがありました。ドル円は146円台前半から一気に140円20銭近辺まで円高ドル安が進み、NY株式市場ではダウが1200ドルを超える上昇でした。多くの市場関係者が「待ちわびていた」インフレのピークアウトを示唆する結果に、これまでのポジションを一気に巻き戻したとみられます。ドル円はロングのストップロスを巻き込み、142円台まではほぼ一直線に下げ、その後も一旦値を戻しましたが、再び下げに転じ140円台前半を記録しています。

 今回のCPIの下振れ予想は「勘」ですが、それでもその気配を感じ取った理由はあります。このレポートでも何度か触れましたが、直近ではFRB、ECB、BOEの主要3中銀が揃って「0.75ポイントという大幅な利上げ」を決めましたが、一方でカナダ中銀とRBAは市場予想を下回る小幅な利上げにとどめました。そろそろインフレのピークが近いことを感じさせる決定だったわけです。そのため、「3中銀が0.75ポイントの利上げを決めるのは、ひょっとしたらこれが最後になるかもしれません」という言葉をコメントとして残しておきました。また、これも昨日のコメントで触れましたが、エジプトで行われた「COP27」で講演を行ったIMFのゲオルギエワ・専務理事が「データを入手する前に判断を急ぐつもりはないが、世界のインフレはピークに達しつつある可能性は非常に高い」と述べています。IMFも独自の調査部門を有しており、その調査には定評があります。ある程度のデータを基に専務理事の言葉は発せられた可能性があると判断したわけです。さらに言えば、昨日のラジオでも「ユーロドルがチャートで上昇気配を示しており、日足で上昇トレンドを示唆するのは昨年6月以来、およそ1年半ぶりのことです。ドル安、ユーロ高が鮮明になってきました」とコメントしました。米国のCPIの結果を受けて、これほどマーケットが反応を見せた記憶は筆者にはありませんが、円高に振れるとすれば「三つの要因」が考えられました。その一つである「米インフレのピークアウトを示唆するデータ」がついに出て来たことになります。この結果を受け、ドルロングの投資家は苦渋を味わい、ショートの人にはようやくやって来たチャンスに胸を撫でおろしていることと思いますが、最も喜んでいるのは「パウエル議長」でしょう。

 さて、問題はここからです。インフレ率は鈍化したとはいえ、まだFRBの目標とする2%の4倍近い水準です。2%まではかなり長い道のりになります。一時76ドル台まで下げたWTI原油価格も今週は91ドル台まで上昇する局面もありました。CPIの揺り戻しもあろうかと思います。クリーブランド連銀のメスター総裁は、「午前中に発表された10月のCPIも総合およびコアの幾分の緩和を示唆しているが、一方で、傾向的に根強いサービス分野のインフレ率はまだ鈍化の兆しを示していない。加えてインフレは引き続き広範だ」と慎重な見方示しています。また、ダラス連銀のローガン総裁も、「CPI統計は安心感を生む歓迎すべき材料だが、まだ先は長い」とこちらも慎重さを崩していません。

 チャートでは「12時間足」までの短いものはすでに、「雲を下抜け」し、トレンドの転換を示しています。筆者が基本とする「日足」では、ローソク足は雲の中に突入してきましたが、雲の下限である138円43銭まではまだ距離があります。昨日から市場のセンチメントは大きく変わってきましたが、140円前後は「まだ買い場」と見たいと思います。ただ、雲を下抜けしたらトレンドの大転換が確認されることと、これまでのように「ドルを買って待てばいい」といった発想はやや危険です。市場はドルの戻りを売るセンチメントが支配的になってきたと思いますが、ここしばらくは市場の気迷いが収まるのを見極めたいと思います。

 本日のドル円は140円~144円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_calender.htm

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