エージーピー、非空港分野の「フードカート」伸ばす

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2022/12/7 9:00

 GPU(地上動力設備)による駐機中の航空機への電力供給サービスで知られるエージーピー(9377)は、リオープン(経済活動再開)に伴い主力事業の回復が進む一方、空港ビジネスに依存し過ぎない収益構造の確立を急ぐ。注目される商材の1つがフードカート=写真=だ。

介護・福祉施設向け、効率化や省エネに寄与

 フードカートは、食事を適時適温で配膳するための再加熱機器でIH(電磁誘導加熱方式)とEH(電気加熱方式)方式とがある。同社は1990年代に日本航空(=JAL、9201)の機内食用を起点に参入し、現在は主に大量の配膳が必要な病院や介護・福祉施設で、現場の効率化を支えている。

 制約が多い航空機内で実証した同社のフードカートはコンパクトで機能や操作性に優れ、個々の食器をピンポイントで加熱する、上位機種は火力と加熱時間の個別調整が可能。このため、加熱する食膳の量によって消費電力を抑制できるほか、食品の製造・流通過程を監視する「HACCP(ハサップ)」のシステムに対応した再加熱カートも手掛けている。

 エージーピーは今3月期に連結売上高111.7億円(前期比7.6%増)、営業利益2.5億円(同2倍)を見通し、中期計画では最終年度の2026年3月期に売上高150億円、営業利益15億円以上を目指している。空港関連ではGPUの利用率向上や地方空港での事業拡大を視野に入れる一方、空港以外の領域でも物流保守サービスやフードカートを伸ばしていく方針だ。

高齢化追い風、採算改善も進む

 フードカートの売上高は、26年3月期に5億円と今期計画比で34%増を計画している。厚生労働省は、20年時点で3618万人だった日本の65歳以上の高齢者数が、25年に3677万人、42年には3935万人に拡大すると予想している。福祉施設への投資も拡大が見込まれる中、「地方展開に力を入れていく」(エージーピーの阿南優樹・専務取締役)。

※写真は「フードシステム販売事業の阿南専務(左)と川崎博安部長」

 これまで日本全国に販売してきた同社だが、直近では特に関西や九州の地方企業が参加する展示会やセミナーなどを通じて営業を強化し始めた。「今後は中部や東北にも範囲を広げる」(阿南専務)という。深刻化する病院や介護・福祉施設での人手不足もフードカートのニーズを押し上げつつある。

 また、21年3月期から組織改編を実施し新体制(注)が発足、これを機に在庫の適正化や部材の調達方法の見直しを進め収益性や採算の向上に繋がった結果、前期はフードシステム販売事業が8年ぶりに黒字化した。中計最終年度には同事業の営業利益率を10%に近付ける考えだ。このほか、給食会社の提供する食材とカートのセット販売にも取り組んでいる。

(注:新体制は阿南専務と川崎フードシステム事業部長)

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