【為替本日の注目点】ドル円日銀会合を受け145円に迫る急騰
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
日銀の決定会合を受けドル円は急騰。さらに植田総裁の会見でもドル買いが続き、LDN市場では144円96銭までドル高が進行。ユーロドルではドル安が進み、1.0987までユーロが買われる。株式市場は糸の切れた凧のように上昇。ダウは251ドル上昇し、これで9日続伸。ナスダックは1万5000の大台に乗せる。債券は横ばい。金と原油は続伸。
11月住宅着工件数 → 156万件
11月建設許可件数 → 146万件
マーケット情報
ドル/円 143.53 ~ 144.47
ユーロ/ドル 1.0954 ~ 1.0987
ユーロ/円 157.60 ~ 158.35
NYダウ +251.90 → 37,557.92ドル
GOLD +11.60 → 2,052.10ドル
WTI +9.07 → 73.44ドル
米10年国債 ±0 → 3.931%
本日の注目イベント
日 11月貿易統計
独 独11月生産者物価指数
独 独1月GFK消費者信頼調査
英 英11月消費者物価指数
欧 ユーロ圏10月経常収支
欧 ユーロ圏12月消費者信頼感指数
米 経常収支(7-9月)
米 11月中古住宅販売件数
米 12月コンファレンスボード消費者信頼感指数
米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、WSJとインタビュー
昨日の昼前、11時49分にドル円は一気に上昇を始め、142円65銭前後から1円ほど「ドル高円安」が進みました。日銀は金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(YCC)を中心とした大規模な金融緩和策の現状維持を決めました。また、先行きの政策指針であるフォワードガイダンスにも変更はありませんでした。市場では、今月7日の国会で植田総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したこともあり、金融政策の修正観測が急速に高まりましたが、昨日の時点ではその見方も後退していました。ただ、1月会合に向け何らかのメッセージはあるのではないかといった見方は一部に根強く残っていましたが、それもなく、結局「円金利は上がらない」ことを材料にリスクオンが強まり、円安、株高が進みました。
ドル円はその後の植田総裁の会見でもジリジリと値を上げ、LDN市場では一時144円96銭までドルが買われ、昨日の日銀の決定だけで2円以上も円安が進んだことになります。あの「チャレンジング発言」は、一体何だったんでしょう。午後3時半から始まった会見の場で、朝日新聞の記者がその真意を質問しました。筆者もどのような意味合いだったのか、興味深く回答を聴いていましたが、総裁は「2年目に入ることもあり、一層気を引き締めてやるというつもり」のものだったと答えていました。ドル円はあの発言を受け、1日で5円程円高が進みましたが、あのような言葉を発すれば為替が大きく動くということは容易に予測できたと思われます。今年は最後まで日銀に振り回されたといった印象が残ります。
NY株式市場では株価の上昇が止まりません。ダウは今月5日の下落を最後に連騰を続け、この間に1400ドル以上も上昇しています。ブルームバーグによると、先週15日には上場投資信託(ETF)の「SPDR・S&P500ETFトラスト」に208億ドル(約3兆円)の資金が流入したそうです。ブルームバーグの集計では、この金額は1993年の同ファンド開始以来最大の資金流入になるそうです。14日にはFOMCが開催され、パウエル議長が「会合で利下げを議論した」と発言したことと関係がないとも思えません。2024年に向け、FRBが政策金利引き下げに動くとの観測から大量の資金が株式市場に向っていると思えます。一方でFOMCメンバーの多くは、むしろタカ派的な発言を発していますが、昨日もそうでしたが、「Who cares ?」といった雰囲気に飲まれているようで、個人的にはやや行き過ぎとの印象も否めません。
リッチモンド連銀のバーキン総裁はヤフー・ファイナンスとのインタビューで、「インフレがうまく鈍化すると見なすなら、われわれは当然、適正に対応するだろう」と述べ、利下げもある得ることに触れましたが、「向こう数カ月間にインフレに関するデータの一貫性と広がりを見たい」と述べています。また、アトランタ連銀のボスティック総裁は同地で開かれたイベントで、「インフレ率は向こう6カ月は比較的緩やかに低下していくと考えている。これは景気抑制的なスタンスを撤回する緊急性がないことを意味する」と述べ、来年利下げを急ぐ必要性はないとの見解を示し、FOMCは来年の後半に2回の利下げを実施するだろうと、自身は予想するが「それに関して活発に議論しているというわけではない」と述べています。(ブルームバーグ)
ドル円は140円台後半まで下げましたが、これでその水準から4円程戻したことになります。植田総裁の発言とFOMCでのパウエル議長の発言で一気に円高に振れましたが、その修正が起きている途中です。これまでにも触れていますが、11月の高値からの下落分の「反値戻し」(146円45銭近辺)は達成しています。ただ、基本的にはFRBによる利上げが終わり、日銀によるマイナス金利の解除を含む政策修正が今後実施されることは変わらないと思います。ドルがどこまで戻すのかが焦点かと思いますが、今回もそうでしたが、相場観の決め打ちはリスクが高いようです。相場の動きに柔軟な姿勢で対峙することは今後も必要です。
本日のドル円は143円50銭~145円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
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