<新興国eye>インド準備銀行、4対2の賛成多数で金利据え置き―2委員が利下げ主張

新興国

2024/6/10 9:10

 インド準備銀行(中銀)は先週末(7日)の金融政策決定会合で、インフレを抑制し、景気を支援するため、流動性調節ファシリティ(LAF)の主要政策金利であるレポ金利(中銀の市中銀行への翌日物貸出金利)を6.50%に据え置くことを4対2の賛成多数で決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀はレポ金利の据え置きに伴い、金融システムから余剰流動性を吸収するため、金利の上下幅(コリドー)についてもLAFのリバースレポ金利(市中銀行の中銀への預金金利)を6.25%、市中銀行が資金ひっ迫時に中銀から政府債を担保に資金を借りることができる流動性供給スキーム「MSF(マージナル・スタンディング・ファシリティー)」と公定歩合をそれぞれ6.75%に据え置いた。

 中銀はインフレの急加速を受け、22年5月4日の臨時会合で0.40ポイントの緊急利上げに踏み切り、23年2月会合まで6合連続で利上げを実施、利上げ幅は計2.50ポイントに達した。同4月会合から据え置きに転じ、これで据え置きは8会合連続。6.50%の金利水準は18年以来4年ぶりの金融引き締め水準となっている。

 賛成多数による金利据え置き決定は前回4月会合に続き、3会合連続。ただ、今回の会合から従来のジャヤント・R・ヴァルマ委員に加え、新たにアシマ・ゴヤル委員も0.25ポイントの利下げを主張、反対票を投じた

 また、中銀は今後の金融政策のスタンスについて、6委員中、4人(前回会合時は5人)が前回会合時と同様、「引き続き、成長を支援しながら、インフレが徐々に物価目標に収束するよう金融緩和の撤回(金融引き締め)に引き続き注力する」とし、利上げサイクルの終了宣言は時期尚早とし、タカ派的な判断を示した。ただ、ヴァルマ委員とゴヤル委員は中立スタンスをとった。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「インフレ率が物価目標に持続的に収束するまで、ディスインフレ(物価上昇率の低下)政策を継続する必要がある」とし、その上で、「インフレ率を物価目標に収束させる決意を堅持し続ける」とし、当面、金融引き締めを維持する考えを示している。

 ただ、市場では今回の会合で利下げを支持するハト派(景気リスク重視の金融緩和派)が2人に増えたことは、23年4月から1年超にわたる金利据え置きから利下げ転換に近づいた兆候と見ている。

 それでも、市場ではモディ首相が率いる与党・インド人民党(BJP)が今回の下院総選挙で過半数の議席(272議席)を取れなかったことから、財政政策が福祉に重点をシフト、財政支出が拡大する可能性があり、インフレ率の物価目標(4%上昇)の達成が遅れるとの懸念を強めている。このため、市場では利下げ転換は10-12月期となるか、またはFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ待ちと予想している。

 足元のインフレ状況は、4月のインフレ率が前年比4.8%上昇と、2月の同5.1%上昇から伸びが鈍化したが、依然、物価目標の中央値を上回っている。中期見通しについては、24年度を4.5%上昇と、前回会合時の予想を据え置き、また、第1四半期(4-6月)を4.9%上昇、第2四半期(7-9月)を3.8%上昇、第3四半期(7-9月)を4.6%上昇、第4四半期を4.5%上昇と、いずれも前回会合時の予想を据え置いた。

 景気見通しについては、中銀は24年度を7%増から7.2%増に上方修正、また、第1四半期を7.3%増(前回会合時は7.1%増)、第2四半期を7.2%増(同6.9%増)、第3四半期を7.3%増(同7%増)、第4四半期を7.2%増(同7%増)と、いずれも上方修正している。

 次回の金融政策決定会合は8月6-8日に開かれる予定。

<関連銘柄>

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