<評価不足のブライダル業界>残存者メリットと収益体質変ぼうで水準訂正迫る

株式

2024/7/3 16:00

 株式市場で久しく光が当たらなかったブライダル業界が熱くなりそうだ。結婚組数が年々減少しているため、斜陽産業というイメージがあるが、実はそうではない。

<少子化・コロナ経て顧客満足度が向上>

 少子化と未婚化にコロナ禍が追い打ちをかけ、ブライダル業界では中小事業者の倒産・廃業が増加し、淘汰(とうた)の波はなおも押し寄せている。一方で、いわゆる残存者利益が拡大する傾向にあり、体力のある大手にはむしろ追い風が吹いている。

 また、コロナ禍を通して各社はコスト低減を図り、筋肉質な経営に転換している。直近の決算では、大半の関連企業で利益率の上昇がみられ、この1~3月はエスクリ<2196.T>やツカダ・グローバルホールディング(ツカダGH)<2418.T>、テイクアンドギヴ・ニーズ(T&Gニーズ)<4331.T>の営業損益が前年同期の赤字から黒字に転じている。

 招待客の少人数化も進む中、サービス品質の向上を通じて顧客の満足度は高まっているようだ。昨年のリクルートブライダル総研の調査によれば、自身の披露宴・ウエディングパーティーに満足したという割合は2009年調査以来で最高の97.8%に達した。値上げの浸透にも結び付いている可能性がある。

<商機うかがい異業種参入、ホテル展開も注目>

 異業種による接近も目立ち、貸し会議室大手のティーケーピー(TKP)<3479.T>がノバレーゼ<9160.T>の発行済み株式数の33%を取得し、持分法適用会社にした。TKPは20年からエスクリにも出資しており、ブライダル事業は商機が大きいと考えていることが分かる。

 今後も設備やサービスの付加価値を高めることで客単価の押し上げが見込まれるほか、挙式以外のパーティーやイベントを受注することによる平日の稼働率改善、AI(人工知能)をはじめとするDX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使した効率化など、収益性をアップさせる余地は依然大きい。業界が変ぼうするポテンシャルを秘めている。

 インバウンド(訪日外国人観光客)の増加に伴い、宿泊事業を強化する動きも注目される。ツカダGHやT&Gニーズは高級ホテルで需要を取り込み、売上高に占めるウエートを拡大させている。また、エスクリはデザインハウスやリノベーションなどの建築不動産事業の売上高比率を、前3月期に約17%(前々期は12%)に伸ばした。

 今期会社計画ベースのPERが10倍を大きく割り込む銘柄も多いことから、業界への市場の認識は実態とカイ離して評価が低いと言えそうだ。今後利益の積み増しが進む中で、株価の水準訂正が期待される。

提供:ウエルスアドバイザー社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ