ECB、政策金利据え置きを決定―5月から緊急流動性供給オペ「PELTRO」開始へ

経済

2020/5/1 9:52

<チェックポイント>

●中小企業・家計向け融資拡大促す「TLTRO3」の適用金利を引き下げ

●緊急債券買い入れ制度「PEPP」は7500億ユーロを維持―増額見送り

●「PEPP」の債券買い入れ額の増額と買い入れ対象拡大の用意あると言明

 ECB(欧州中央銀行)は4月30日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、下限の中銀預金金利をマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 ECBは会合後に発表した声明文で、今後の金融政策運営について、3月12日会合時と同様に、「経済予測の期間中、インフレ見通しが2%をやや下回る水準(物価目標)に十分に収束するまで、ECBの政策金利は現在の水準か、または一段と低い水準となることが予想される」と将来の利下げに含みを残している。

 ECBが3月18日の緊急理事会で、コロナ危機対策として導入を決めた緊急債券買い入れプログラム「PEPP」(20年末までの時限措置)の規模が現在の7500億ユーロから1兆ユーロ超に拡大されるかどうかに市場の注目が集まっていたが、買い入れの増額は見送られた。

 ただ、ECBは声明文で、「PEPPの規模を増額し、また、買い入れ対象を調整(拡大)する用意がある」と将来の増額の可能性を示唆した。PEPPは既存の資産買い入れプログラム「APP」とは別に導入されたもの。買い入れ資産の対象にはAPPの対象資産がすべて含まれるほか、信用格付けが低いため、これまで買い入れ要件を満たしていなかったギリシャ国債も買い入れの対象に含まれる。

 また、ECBは今回の会合で、ユーロ圏の金融システムに流動性を潤沢供給するための緊急オペ「PELTRO」(緊急パンデミック長期流動性供給オペ)」を実施することを決めた。5月19日から12月1日まで計7回にわたって公開市場操作(オペ)を行う。この資金供給オペの満期は21年7-9月までとなっており、適用金利は過去のリファイナンス金利の平均を0.25%ポイント下回る水準(マイナス0.25%)としている。PELTROは、銀行による中小企業や家計向け融資の拡大を目指す「TLTRO3」(貸出条件付き長期資金供給オペ)と同様、バックストップ(安全策)」と位置付けられ、リセッションリスクに先手を打つ“保険”としての一時的な措置となっている。

 このほか、ECBはTLTRO3の貸出条件をさらに緩和することも決めた。TLTRO3は19年9月19日から導入され、銀行による企業や家計への貸し出し拡大を目指している。3月12日の前回会合で、運用期間が21年3月末から同年6月末まで延長されている。TLTRO3に基づいて、ECBはユーロ圏内の銀行に対し、適格貸出金残高の最大50%まで直接貸し出す。貸出期間は3年間。

 TLTRO3では、銀行への貸出金利は、従来は「過去のリファイナンス金利の平均を0.25%ポイント下回る水準(マイナス0.25%)を適用する」となっていたが、今回の措置により、20年6月24日から21年6月23日までの期間中は、「過去のリファイナンス金利の平均を0.50ポイント下回る水準(マイナス0.50%)を適用する」、また、貸し付けに積極的な銀行に対しては20年6月24日から21年6月23日までの期間中、「中銀預金金利の平均を0.50ポイント下回る水準(マイナス1.00%)を適用する」とし、いずれも事実上、適用金利が引き下げられた。

 さらに、ECBは19年3月に景気刺激策として、APPによる量的金融緩和を満期償還金の再投資だけで継続する方針も決めたが、今回の会合でもこの方針を据え置いた。再投資による資産買い入れの終了時期についても「望ましい流動性の状況や十分な金融緩和を維持する必要がある限り、できるだけ長期にわたって続ける」との文言も据え置いた。

 次回の金融政策決定会合は6月4日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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