海外株式見通し=米国、香港

米国株:問われる高レバレッジ相場の持続性

 米国では大統領就任から100日間は「ハネムーン期間」と呼ばれ、株式市場で大きな波乱が起きにくいと言われる。その通りに米国株式市場は堅調に上昇を続けてきた。大統領就任日から100日後が4月30日であり、バイデン大統領は4月末までの新型コロナワクチン2億回接種目標を前倒しで達成したほか、28日に上下両院合同会議で政権の全体的な政策方針を国内外に説明する施政方針演説を行った。

 就任後最初のクライマックスを前に現在の米国株式市場を実体経済との関係を評価する上で、NYSE、NYSEアメリカン、ナスダック市場で取引される米国本拠のすべての企業の株式を対象とする時価総額加重平均の株価指数「ウィルシャー5000」を、米国名目GDP(国内総生産)で割った倍率の推移が参考になろう。

 同倍率は「バフェット指数」と同様の意味合いを有し、今年3月末に、2000年3月末のITバブルピーク時の143%を大きく上回る過去最高の194%に達した。これは、現在の米国株式市場に実体経済の2倍近いレバレッジが掛かっていることを示唆する。投資会社アルケゴス・キャピタルとの取引に係る幾つかの金融機関の巨額損失も、高レバレッジ取引の限界が表面化したものであり、その意味では現在の米国株式市場全体がはらむ矛盾と限界の一つの表れと言えなくもない。

 「ハネムーン期間」後、グロース(成長株)優位からバリュー(割安株)優位へのシフトと、バイデン大統領が提案した富裕層個人へのキャピタルゲイン増税への懸念が増すならば、米国株市場の「高レバレッジ相場」の持続可能性が問われよう。今後の投資戦略としてはバリュー・景気循環銘柄の中でもファンダメンタルズ(経済条件)面からのカイ離が小さい低PBR(株価純資産倍率)、または高配当利回り銘柄の重要性が増すかも知れない。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

香港株:商品市況上昇で好業績に沸く中国本土市場

 非鉄金属の幅広い商品が国内外での高騰している。銅地金の世界消費量は米国の8%に対して、中国が約5割を占める。アルミ地金では中国が生産国としても消費国としても世界最大だ。中国税関総署によると、20年の中国の未加工銅の輸入量が前年比34%増の668万トンと過去最高に上ったのに続き、21年1~3月は前年同期比12%増の143.6万トンとなったように、中国による銅の実需が高止まりしている。

 香港市場がニューエコノミー市場として変ぼうを遂げつつあるのに対し、中国本土市場は未だオールドエコノミー市場として色合いが濃い。上海総合指数を業種別でみると、素材が10.0%、資源が4.9%のウエートを占める。深セン総合指数では素材セクターのウェートが12.5%だ。

 中国企業はこれまで、ニューエコノミー企業の業績が伸びる一方で、オールドエコノミー企業の業績不振が足を引っ張る展開が目立ってきたが、商品市況の上昇に伴い、最近はオールドエコノミー企業が業績拡大に転じることで、中国本土市場全体が好業績に沸いている。

 商品市況上昇で恩恵を受ける銘柄としてまず思い浮かぶのは、総合銅メーカー大手の江西銅業だ。同社の純利益は、20年通期が前期比5.9%減の23.2億元となった。21年1~3月期も前年同期比5.2~5.5倍の8.31億~8.79億元となる見通し。また、中国建材は21年1~3月期の純利益が同3倍超に上るとの見通しを発表した。

 有色金属、建材、セメント、石油化学、石炭などの業界大手が21年1~3月期決算見通しについて相次いで上方修正を発したことから、オールドエコノミー関連株がにわかに脚光を浴びるようになった。この動きは中国本土市場の株高に寄与するほか、重厚長大銘柄が多く連なる香港市場のH株の見直し買いにつながることが期待される。

(フィリップ証券リサーチ部・李一承)

(写真:123RF)

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