松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:カーシートなど受注好調続く

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2022/2/28 9:00

 松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317・M)は縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計腕帯、カーシート、エアバッグなどの製造・販売を手掛ける。独自性の高い技術に強みがあり、各事業のニーズは拡大中だ。さらに、独自技術を生かして、自動車、医療、セーフティーシステムなど幅広い分野で新事業を推進しており、将来的な成長期待は大きい。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。

 ――新型コロナの影響もあって、今3月期は連結売上高56億円(前期比23.0%減)、営業利益3億3000万円(同60.6%減)を見込んでいます。

 「当社の縫製自動機事業は、顧客に自動機を購入してもらい、子会社の松屋ベトナムに設置し、子会社が製品を製造して顧客に納入するというビジネスモデルになっています。しかし、昨年夏にベトナムで新型コロナウイルスの急拡大を受け、コロナ対策規制が発令され、受注は好調だったにもかかわらず、工場の稼働率が低下しました。納期対応のため残業代やエア便を使ったことによる運賃などが増加し、利益面を圧迫しました。前期に特需として発生したアイソレーションガウンの受注減少も影響していますが、既存の事業においては増収となっており、拡大基調に変わりありません」

 ――現在のベトナムの状況はいかがですか。

 「既に最悪期は脱し、ベトナム子会社においては従業員全員が3回目のワクチン接種を完了し、昨年のように工場自体の稼働を止めるような措置はありません。その一方で、血圧計腕帯、カーシート、エアバッグなどの受注は引き続き好調です。工場の稼働状況が通常に戻った11月以降は前年同期比で増収増益ペースが続いています」

リハビリ関連など新規事業推進

 ――新事業展開にも積極的ですね。

 「縫製品事業で安定収入を得るとともに、それを基盤として次世代縫製自動機の開発を目指すほか、新規事業の開発にも取り組み、継続的な成長を目指しています。新規事業には、メディカル・ヘルスケア事業において医療用装置の開発、リハビリ用ロボット事業、最先端ウェアラブル機器などがあります。また、セーフティーシステムにおいて、3D(立体画像)画像処理付き縫製ロボット、省力化ライン、ドローン(小型無人飛行機)用エアバッグの開発も行っています」

 「今年2月には当社のMatsuya Innovation Center(MIC)で開発した生産管理システムを発売開始しました。同システムを利用すれば、顧客の生産設備において不良がいつ、どこで起こり、それが誰の作業かを瞬時に特定することが可能になり、生産現場のコストを大きく削減することができます。同システムは成果報酬で、削減できたコストの一定比率を当社の収入として受け取るビジネスモデルも検討しており、継続的な収益獲得が見込めます」

 ――近くスタートする新規事業には何がありますか。

 「リハビリ関連事業は4~5月に本格展開する予定です。Forbes誌でも紹介されたポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社と日本総代理店契約を締結し、EGZO社のEMG(表面筋電図)を利用した脳梗塞(こうそく)のリハビリ用ロボットおよび周辺機器の販売を行います。同ロボットは脳梗塞のリハビリに回復実績があり、現状の介護では3~4人の補助が必要になるところ、同機器を利用すれば補助の必要もなくなり、医療現場の人手不足にも大きく貢献できます。現在は認可待ちの状況で、将来は自社でリハビリセンターの展開も視野に入れています」

 「一方、3D画像処理付き縫製ロボットについて、伸び縮みのある柔らかい素材の縫製を実現する技術の検証を目的に、オムロン(6645)と共同で開発に着手しました。今回の共同開発では、当社の自動縫製機器の開発能力と、オムロンの保有する画像認識・画像処理技術およびロボット制御技術を融合させた、画期的な3D縫製ロボットの開発を目指しています」

新工場建設で生産能力強化・コスト削減

 ――将来のビジョンを教えてください。

 「当社の技術、システムを利用すれば、同じものを製造しても、安く、高品質にできる点が強みです。今後、より一層の認知度向上を図り、さらなる顧客増を目指します。また、ポーランド、ルーマニア、メキシコなど、ベトナム以外の国への進出も進めています。いずれはベトナムと同規模の売上に持っていくことを考えています。既にポーランドには拠点の開設を計画しています」

 「ベトナムでは現在の5工場をすべて集約した新工場を建設する予定で、受注増に応じた生産規模の拡大とともに、MICの拡充にも取り組みます。工場の土地、建物とも従来はレンタルでしたが、新工場建設で自社工場を保有することにより、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても、1億円以上のコスト削減が見込めます。また、工場を1カ所に集約することで、警備などの管理費削減に加えて、業界初のスマートファクトリー実践のため、さらなる自動化に取り組み、レンタル費用とは別に効率化による費用削減効果も期待されます。費用削減効果は23年9月以降から発生する見通しです」

【記者の目】

 同社は表面的には縫製工場、自動車部品メーカーのように見えますが、実質的にはそれだけにとどまっていません。縫製工程を自動化する独自の技術を持っており、それを活用して、幅広い事業を展開しており、オンリーワンの企業です。また、同社の開発した技術、システムを利用すれば、同じものを製造したとしても、安く、高品質にできることで、顧客にとってはありがたい存在にもなっています。現段階でまだ事業規模が大きいとはいえませんが、省力化、効率化の時代の流れにも沿っており、成長のための積極的な投資の効果も出て、これから長期的な拡大が期待できます。全体相場の低迷もあって株価は軟調な展開が続きますが、長期的スタンスで仕込み好機といえるでしょう。

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