GRCS、企業のリスク対策支援で高成長

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2022/7/26 16:00

 企業の外部環境リスク対策を支援するGRCS(9250)が成長市場を取り込んでいる。今11月期(非連結)に売上高20.9億円(前期比19%増)、営業利益1.9億円(同55%増)を見込む同社の佐々木慈和社長は、新領域の確立にも意欲を示す。なお、子会社の取得を含めて通期業績見込みを精査中だ。

「年間売上3000万円超顧客」を拡大

 同社の商号にある「GRC」は、「G=ガバナンス(企業統治)」、「R=リスク」、「C=コンプライアンス(法令順守)」に関するマネジメント。グローバル化や環境変化に伴い、さまざまなリスクにさらされ対応にひっ迫している。背景には、欧米と比べ不十分なGRCへの理解があり、GRCSはこれに「S=セキュリティー」も加えてコンサルティングを展開。プロダクト導入と合わせて課題解決に貢献する。

 いわば、企業のディフェンス(守備体制)の構築をサポートする同社。外部環境リスクを分析し、課題を可視化するツール「ERMT(エンタープライズ リスク エムティ)」などを自社開発プロダクトとして保有する。さらには、その運用をモニタリングし、取引が継続することが強み。売上高の約95%を既存顧客が占めており、安定的なストック基盤が特徴だ。

 海外の大手コンサルやITベンダーもリスク対策に関するサービスを展開しているものの、その機能はユーザーにとって過剰であったり、高価過ぎたりする傾向がある。一方、GRCSは顧客の求める経営の守りに特化し、リーズナブルな価格で提供できる点が強み。100人規模の豊富な専門人材を擁し、10年以上の実績に基づくノウハウを武器に優位なポジションを維持している。

 今期は上期の売上高が11.1億円(前年同期比33%増)に拡大した。リスクへの意識が高まる中で、同社は既存顧客へのアップセル(注)を着実に進めている。年間取引高が3000万円以上の顧客数は前期に14社(前々期は10社、全体は102社)に増え、売上高に対するシェアは7割を超えた。

注・アップセル=既存顧客により上位の商材を提供することで売上単価を向上させる営業手法

「フィナンシャルテクノロジー」第3の柱へ

 こうした大企業は、GRC分野への支出を相対的に惜しまないため、同社の収益基盤を安定させる。また、新たな課題が浮かび上がることで、それに対応したサービスを提供していくことで顧客当たりの売上向上が図れる。また、年間取引高3000万円未満の顧客(前期実績で88社)に関しても、「(上位の)14社になり得る規模の企業が半数ほどある」(佐々木社長)。

 目標とする3割増収ペースをキープする一方で、今期は上期としては若干(900万円)の赤字を計上した。しかし、これには育成中の「フィナンシャルテクノロジー」への投資が主因だ。

 フィナンシャルテクノロジーは主要な顧客業界の1つである金融向けに、まずフロント業務に関するサービスを提供する。これを足掛かりに、アンチマネーロンダリングやサイバー攻撃対策といったGRC、セキュリティー分野のサービスへと拡大していく。

 金融業界の規模は大きく、同社はコンサルからデザイン、開発、実装、メンテナンスまでをワンストップで提供していく構え。上期はフィナンシャルテクノロジーの専門人材の労務費が増加したが、今後の成長基盤の強化につながる見通し。佐々木社長は、「将来的に(現在の軸のGRSソリューション、プロダクトに次ぐ)第3の柱になる」とみて投資を強化している。

 また、直近では人材採用強化の支援サービスを展開するバリュレイト社を買収した。バリュレイトのスタッフをGRC、セキュリティー領域の専門人材へと育成するほか、業績拡大に欠かせない採用力の拡充に結び付ける考えだ。

(写真:123RF)

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