<年末年始特集>どうなる暗号資産―22年の振り返りと23年の展望(2)

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2022/12/30 16:12

(1)からつづく

―23年の暗号資産の展望

 FTX破たんから間もないため、23年に入っても暗号資産関連企業の破たんなどへの警戒は根強いと考えられ、暗号資産市場への本格的な資金の流入には時間がかかる可能性がある。

 金融市場全体としては、世界的な物価上昇を受けた金融引き締めの動きが重くのしかかっており、23年もFRB(米連邦準備制度理事会)など主要中央銀行の金融政策が暗号資産の値動きに大きく影響するとみられる。金融引き締めの長期化や、日銀による政策修正は織り込まれつつあるが、今後もFOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーによる政策金利見通しや米物価指標などは注視する必要があるだろう。

 一方、年初から暗号資産関連では大きな動きがある。破たんしたマウントゴックスの弁済が始まるが、弁済の受領を希望する債権者は1月10日までに手続きを済ませる必要がある。債権者一人当たりの弁済額などは明らかになっていないが、マウントゴックスは19年時点でビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)をそれぞれ約14万保有しており、12月28日時点の価値は約3000億円超となる。弁済にはSBI VCトレードなどの暗号資産取引所が代理受領業者に認定されており、暗号資産の口座開設なども必要になる。全額弁済された場合、投資マネーが一定程度でも暗号資産市場に再び入ってくれば相場の支えになるだろう。

 主要な暗号資産では、1月にスイスの21シェアーズUSが開発したビットコインの現物価格に連動するETF(上場投資信託)について、SEC(米証券取引委員会)がその是非を明らかにする予定。これまで通り却下される可能性は否定できないが、もし承認されればサプライズとなり、ビットコインの支えになる。

 イーサリアムは9月の「Merge」に続く大型アップデート「シャンハイ」を3月に控えており、思惑が先行すれば上値を試すような展開もあり得る。また、3月までにXRP(XRP)を管理するRippleとSECの裁判が終結するとの見方があり、もしRippleが勝利となり、暗号資産は証券ではないと判断されれば、XRPだけでなく、ほかのアルトコインにとっても明るい材料となるだろう。

 国内では、金融庁は4月から施行される改正資金決済法に合わせて海外発行のステーブルコインの取り扱いを可能にするとも伝えられている。預金のための利用や、上限を設けた送金での利用を想定しており、より早い国際送金などが期待される。ただ、22年の「テラショック」ではステーブルコインへの信頼性が大きく失われた。資産保全やマネーロンダリング対策がどれだけ整備されるかが焦点となりそうだ。

 一方、23年春から日本銀行が3メガバンクなどと「デジタル円」の発行に向けて実証実験を行う。デジタル円は、いわゆる「CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)」と呼ばれるものだ。これまで日銀は基本機能の検証や周辺機能の実現可能性などを検証してきたが、今回は民間企業や消費者が実際の決済で使えるか検証する。決済から入金まで1カ月程度を要するクレジットカードと違ってCBDCでは即座に入金でき、夜間や休日でも送金できるため、利便性が高まると期待されている。また、災害時など、ネットがない環境でも稼働するか確かめるという。

 CBDCでは、中国も実証実験を始めている。一方、ロシアは23年中にデジタルルーブルの取引を開始する予定だ。ウクライナをめぐって西側諸国との対立が続いているが、デジタルルーブルが成功すればドルやユーロといった基軸通貨を使った経済制裁の威力が衰えるとの見方もある。

 個別では、23年下半期にライトコイン(LTC)やモナコイン(MONA)が半減期を迎える見通し。半減期は新規発行される暗号資産の枚数が半減するイベントで希少性が高まるとして上昇材料にされることが多く、近づくにつれて思惑が強まりそうだ。

提供:モーニングスター社

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