アナリストの視点:アクティブファンドの選択は念入りに、国内株式・米国株式型の勝率は低調
2024年から新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まる。従来のNISA制度を抜本的に拡充・恒久化した新NISAは、「貯蓄から投資へ」という動きを加速させるきっかけとなろう。投資の基本原則である「長期・分散・積立」と親和性の高い「ノーロード・低コストのインデックスファンド」がコアになると予想されるが、アクティブファンドに投資して一段と高いリターンを狙う投資家も少なくないだろう。ただ、アクティブファンドの勝率は高くはない。玉石混交とも言えるアクティブファンドの中から、納得して投資できるファンドを厳選する必要がある。
“アクティブの勝利”、米国株式では過去20年中4年のみ
アクティブファンドの勝率を見てみよう。一般の投資家が購入できる国内公募追加型株式投信(確定拠出年金専用、ファンドラップ専用、ETF除く)のアクティブファンドを対象に、過去20年間(2003年~2022年)の各年において、年間のトータルリターンが市場平均を上回ったファンドの割合を確認した。米国株式に投資するアクティブファンド(ウエルスアドバイザーのカテゴリー『国際株式・北米(為替ヘッジなし)』に属するファンド、以下『米国株式アクティブファンド』)について見ると、市場平均である「S&P500(配当込み、円換算)」を上回ったファンドの割合が半分以上となったのは、2003年(67%)、2005年(55%)、2007年(83%)、2009年(77%)の4年のみであった(図表1参照=画像クリックで拡大画像にジャンプ)。国内株式に投資するアクティブファンド(カテゴリー『国内大型グロース』、『国内大型ブレンド』、『国内大型バリュー』に属するファンド、以下『国内株式アクティブファンド』)では、「TOPIX(配当込み)」を上回った割合が半分以上となったのは20年中10年と米国株式アクティブファンドを上回りはしたが、半分にとどまった。長期的なパフォーマンスに優れるアクティブファンドがあるのはもちろんだが、全般的な勝率の低さを考えると、ファンド選びは念入りに行う必要があろう。
過去のパフォーマンス、運用方針、運用プロセス、ポートフォリオを確認
アクティブファンドの選択に際しては、目論見書等で運用方針、運用プロセス、ポートフォリオ等を確認するほか、過去のパフォーマンスも参照したい。過去のパフォーマンスは未来の運用成績を保証するものではないが、長期的に優れたパフォーマンスを挙げているファンドは、環境が良好な時だけではなく厳しい時も経験しての実績であるだけに、一定の評価は出来る。5年、10年といった長期のトータルリターンのほか、リスクに見合ったリターンを獲得しているのかを測る指標であるシャープレシオも確認しておきたい。2023年4月末時点において、10年シャープレシオがカテゴリー内の最上位水準(上位10%内)となった国内株式アクティブファンドは21本、米国株式アクティブファンドは2本ある。各カテゴリーのアクティブファンドの中で%ランクが最も良好なファンドは図表2(画像クリックで拡大画像にジャンプ)の通りである。
長期的な運用効率に優れるファンドでも常勝ではない
過去のパフォーマンスを見る上で留意しておきたいのは、“常勝ファンドはない”という点だ。前述した10年シャープレシオがカテゴリー内の上位10%内である国内株式アクティブファンド、米国株式アクティブファンド合計23本について、過去10年間(2013年~2022年)の各12月末時点における1年間のシャープレシオの%ランクの推移を見ると、10年間全てで%ランクがカテゴリー内上位10%内となったファンドは1本もなく、5年間が最多であった。5年間となった3ファンドのうち2ファンドについて各年の推移を見ると図表3(画像クリックで拡大画像にジャンプ)の通りである。
両ファンドともに、相対的に優れた運用効率を発揮した年もあれば、大幅に悪化した年も見られる。悪化した際に保有を継続していれば、その後の回復局面で恩恵を享受することも可能である。アクティブファンドについては、厳選して選択したファンドを、逆風の中でも保有し続けることを、まずは心掛けたい。
低コストほどリターンは良好
最後にコストについて見ておきたい。アクティブファンドは、市場環境や銘柄の調査・分析に手間が掛かるため、相対的にコスト水準が高い。コストに見合ったリターンを獲得出来ていれば問題ないとの見方もあるが、運用成績の押し下げ要因であるコストが低いに越したことはない。図表4(画像クリックで拡大画像にジャンプ)は、ウエルスアドバイザーのフィーレベルカテゴリー「先進国株式・アクティブ」に属するファンドについて、フィーレベルと5年リターン(年率)の関係を見たものである。相対的なコスト水準の最も低いフィーレベル「安い」のリターンが最も高く、コスト水準の最も高い「高い」のリターンが最も低い。インデックスファンドだけではなく、アクティブファンド選びにおいても、コストには厳しい目で臨みたい。
(武石謙作)
(写真:123RF)
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