海外株式見通し=米国、香港
【米国株】長引く金融引き締め、ブラックロックに学ぶ投資戦略

9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では政策金利(FF<フェデラル・ファンド>金利)が据え置かれた一方、2024年末の予想中央値は3カ月前から0.5ポイント引き上げられた。いわば「タカ派の利上げ停止」の様相を呈したことで、米国債利回りは10年物が4.5%を超えるレベルに切り上がり、2年物も5.1%台で推移している。米国株と比較しても、米債や米ドル預金の短期確定利回りの魅力は一挙に高まった。
資産運用世界最大手のブラックロックが6月に発表した「2023 Midyear Outlook」には、中央銀行が長期にわたる金融引締めを維持せざるを得ないとの見通しが既に示されていた。その要因として、供給制約によるインフレ圧力に加え、高齢化に伴う労働者供給の減少が背景にあり、売上減少局面でも労働者を保持しようとする動機が高まることで「景気後退局面における完全雇用の可能性」に言及している。銘柄選択の観点からも企業の雇用に関連したサービスは有望と考えられよう。
同資料では、各国の経済やセクター全体の収益性に大きな変化をもたらす「メガフォース」として、(1)デジタル化による創造的破壊とAI(人工知能)(2)分断化する世界(3)低炭素への移行の追跡(4)人口の高齢化(5)金融業界の今後――の5項目が挙げられている。今後の銘柄選択においても柱として考えてよい視点・ポイントだろう。
AI(人工知能)をめぐっては、28日に決算発表予定のアクセンチュア(ACN)のように幅広い業種向けに関連特許を数多く保有し、来るべき時代に備えている企業もある。人口の高齢化は医薬品需要を構造的に高めると同時に、生産年齢人口減少に伴う所得減少と財政支出増による国債発行増を招き、長期金利への上昇圧力となりやすい。他方、金融業界の今後としては、足元の米銀の弱体化と貸出減少の懸念の声が上がる中でも、ノンバンクやプライベート・クレジットなどが伸びる余地がある点は注目される。
【香港株】市場環境が厳しくなるほど魅力増す
香港・中国本土の株式市場は国慶節(建国記念日)の長期休暇を前に不動産開発大手企業の経営問題に揺れている。このような中で香港株に投資チャンスを見いだせるのだろうか?
折しも、日本株は9月末の配当権利をめぐって予想高配当利回り銘柄への投資が活発化した。ところが、TOPIX(東証株価指数)の構成銘柄のうち大型株と中型株の約500銘柄から構成される「TOPIX500」を見ると、9月26日終値で予想配当利回り5%を超えるのはJT(2914)の1銘柄だけだった。これに対し、香港市場の代表的な株価指数である香港ハンセン指数構成の80銘柄を見ると同日時点で利回り8%以上が12銘柄もある。
不動産関連業種を除くと8銘柄だ。中国神華能源(チャイナ・シェンファ・エナジー)は11%台、中国海洋石油(CNOOC)は10%台、中国建設銀行(チャイナ・コンストラクション・バンク)、中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)、中国中信(シティック)の3銘柄が9%台、中国工商銀行、中国石油化工(シノペック)、中国石油天然気(ペトロチャイナ)が8%台となっている。
中国神華能源、中国海洋石油、中国石油化工、中国石油天然気は国有企業系のエネルギー関連企業であるほか、中国建設銀行、中国銀行、中国工商銀行は中国の4大国有商業銀行に名を連ねる。
23年度の市場予想配当性向(予想配当金の予想1株利益に対する割合)を見ると、特に国有商業銀行は3割程度で安定している。エネルギー関連株も含めて無理をして高配当を維持しているようには見受けられず、減益の際の減配リスクも限定的とみられる。他方、株価推移ではエネルギー関連銘柄が国有商業銀行をパフォーマンスで上回っている。市場を取り巻く環境が厳しくなるほど、これらの香港株の魅力が相対的に増すと言えるだろう。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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