消費トレンドは「タイパ・コスパ」の時代に――新潮流捉える企業に注目

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2024/1/24 10:00

 「タイパ(タイムパフォーマンス)」や「コスパ(コストパフォーマンス)」と呼ばれる消費行動が若者を中心に定着している。そのトレンドは、より高い年齢層にも広がりつつあり、こうした需要を捉えたヒット商品やサービスも相次いでいる。投資のテーマとしても有力とみられ、関連銘柄に注目が集まる。

(写真:123RF)

発信源はZ世代、ダイバーシティ社会にも貢献

 1990年代半ば~2010年ごろに生まれた「Z世代」は経済成長の時代を知らない。そのためか節約志向が強く、高価なブランド品や海外旅行への関心が低いとされる。一方で、ITに親しみ、インターネットやSNSを駆使することで、お金と時間を有効に活用しようとする傾向があるという。

 タイパやコスパは、そうしたZ世代に特徴的な消費行動だ。満足を得るための時間効率の尺度に当たるタイパ(用例:「タイパが良い」など)をめぐっては、映画作品の倍速視聴など、人によっては眉をひそめてしまうような習慣も指摘される。とはいえ、エンターテインメントのコンテンツが、Z世代を意識したつくり(情景描写や前・間奏の削減)になってきているのもまた事実だ。

 タイパが活躍するフィールドはもはやZ世代にとどまらない。女性の社会進出や男性の育児参加といったダイバーシティの観点からも、有力な選択肢になっている。

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 共働き世帯にとって、毎日の食事は悩みの種になる。調理に充てる時間は限られるが、外食やテイクアウトばかりでは出費がかさみ、健康も気がかり。そこで求められているのが、手間をかけずに手作りのメニューが味わえるミールキットだ。

※右の画像クリックで表拡大

 オイシックス・ラ・大地<3182>は、「Oisix(オイシックス)」「らでぃっしゅぼーや」などの宅配食事業を展開。20分で栄養バランスのとれた主菜と副菜が作れる食材セット「Kit Oisix(キットオイシックス)」のコース会員数は、昨年9月末時点で28.4万(前年9月末比19%増)に上る。コロナ禍の内食特需が一巡した後も、底堅く利用者を増やしている。

 冷凍食品も、タイパ志向が市場拡大の追い風になっている。大手のニチレイ<2871>は今3月期、連結営業利益350億円(前期比6%増)を計画し、21年3月期の最高益(329億円)を更新する見通し。総合小売のイオン<8267>も、タイパを意識した冷凍食品「トップバリュ 雑穀米と食べるサラダボウル」を昨年11月に投入した。

 化粧品市場でもタイパがキーワードになっている。化粧水や乳液、美容液の機能をワンステップで完了するオールインワンジェルや、時短コスメに役立つメイクグッズは頼れる味方だ。化粧品はZ世代の主力メディアであるSNSがヒットの発信源になるケースが多く、メーカーもタイパを押し出したマーケティングを意識する。

 プレミアアンチエイジン(Pアンチエイ)<4934>、は、看板ブランドの化粧落とし「DUO(デュオ)」のほか、エイジングケアの「CANADEL(カナデル)」を展開。カナデルはオールインワンを主体とし、忙しい現代女性の時短ニーズに訴求する。同社はデュオに続く第2ブランドとして育成中だ。

 下地や日焼け止めなど、マルチな役割を担うクッションファンデーションもタイパ需要にマッチする。オールインワン化粧品も手掛ける新日本製薬<4931>のほか、資生堂<4911>をはじめとする大手各社がラインアップを揃える。また、雑貨の良品計画<7453>は、化粧品を強化している。

あの企業は「コンビニジム」快進撃

 そして〝自分磨き〟にも、タイパ・コスパの時代がやってきた。フィットネスジムやエステに通ってみたいけど、その値段や手間は適正なのか?――。かしこい消費者なら当然抱くだろう疑問に対し、RIZAPグループ<2928>が出した答えが「chocoZAP(チョコザップ)」だ。

 チョコザップは、月額2980円(税込み3278円)で24時間・365日通い放題のコンビニジム。パーソナルトレーナーのいない一般的な24時間ジムの料金(6000円台~1万円程度)と比べて圧倒的に安く、全国40都道府県に1160店舗を構える(23年11月14日時点)。また、エステや脱毛のほか、新たに始めた歯のホワイトニングやネイルといったセルフサービスを追加料金不要で利用できる。

 時間とお金を効率的に使いたい消費者にとって、安く手軽に健康・美容の体験を身近なものにできるチョコザップのポテンシャルは大きい。アプリの新機能では食事管理や睡眠記録もカバーし、ヘルスケアの追及を幅広く支える。

 チョコザップのアクティブ会員数は22年7月のサービス開始から1年半足らずの間に100万人を突破するなど、目を見張る勢いで伸びている。退会率も低下傾向にあり、利用者の満足度は高まっている状況だ。今3月期までの先行投資期間を経て、来期以降の利益貢献フェーズへ向けた基盤は固まったようだ。

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