海外株式見通し=米国、香港

【米国株】生成AI・DC周りの有力銘柄は?

 米半導体大手エヌビディア(NVDA)の2~4月決算と5~7月見通しは市場期待を上回り、発表翌日(23日)以降、同社の株価は急騰している。半導体株をめぐっては、エヌビディアのほかにもコヒレント(COHR)、マーベル・テクノロジー(MRVL)、ブロードコム(AVGO)といった企業も注目される。

 コヒレントは電気信号と光信号を相互交換する光トランシーバーの業界首位。光トランシーバーは、生成AI(人工知能)の普及に伴いデーターセンター(DC)の機器間を高速でつなぐ基幹部品として重要性を増している。マーベル・テクノロジーは、DCの中核部分~ネットワークのエッジ(端)まで幅広いデータインフラ向け半導体ソリューションを手掛ける。この2銘柄の活躍を見ると、DC周りで大量のデータと機械学習・深層学習で構築される大規模言語モデル(LLM)による学習や推論をスムーズに行うための、専門的な技術を擁している企業が今後強みを発揮しそうだ。

 データ処理が必要なAIを端末上で素早く動かす「エッジAI」では、スマートフォンに強いクアルコム(QCOM)の通信半導体の技術と、英アームホールディングス(ARM)の省電力設計が強い。エッジAIの領域はエヌビディアといえども「脇役」の1社という位置付けになりそうだ。

 AIと機械学習は断層の位置を正確に把握するなど、石油・天然ガス生産の分野でも威力を発揮し始めている。エネルギー価格は中東情勢の不透明化もあり下落しにくい反面、将来的にはAI活用が生産コストの低下をもたらす可能性もありそうだ。「AIエネルギー株」としては、油田サービス大手のハリバートン(HAL)が注目される。

【香港株】中国半導体銘柄と香港不動産株をどう見るか?

 中国政府が24日、半導体の新たな国策ファンドを設立した。AIに欠かせない半導体をめぐって米国が対中包囲網を強化する中で、中国は独自の供給網を構築して対抗する構えだ。過去の第2期までは、半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC、981香港)や、メモリー大手の長江存儲科技(YMTC)などに投資してきた。27日の香港株式市場でもSMICのほか華虹半導体(フアホン・セミコンダクター、1347香港)が大幅高となるなど、期待も大きいようだ。

 SMICは新たな国策ファンドからの支援が期待されるものの、9日発表の2024年1~3月決算は純利益が前年同期比69%減にとどまった。製造コスト上昇と研究開発支出の増加が利益を圧迫している。台湾TSMCや韓国サムスン電子のようにAI半導体の伸びが期待できない限り、販売が国内に偏る中でコスト上昇が収益面の重荷となりやすいとみるべきだろう。

香港4大不動産会社

 他方、中国経済最大の不安定要因とされていた、不動産開発会社の株価が反発局面にある。何立峰副首相はこのほど、不動産不況をめぐる解決策の一環として国内で売れ残っている住宅を買い取る方針を示した。地方政府が買い取った後に安価な住宅に転換して提供し、買い取り資金は中央銀行(中国人民銀行)が最大3000億元の再融資制度を創設するという。

 投資の観点からは、香港の4大不動産会社が注目される。その中でも予想配当利回りや配当性向、予想PERなどから見て恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント、12香港)、新鴻基地産発展(サンフンカイ・プロパティーズ、16香港)が有望だろう。

 香港財閥の伝統の厚みに加え、広東省・香港・マカオの経済協力を強化する「大湾区・グレーターベイエリア」構想に期待が掛かる。運輸関連のインフラ整備の大型事業として香港と深センを結ぶ「港深西部鉄道」の敷設計画は、香港政府によれば今年半ばまでに計画と実現可能性調査などの検討を完了させる見通しだ。

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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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