安倍首相辞任でどうなる日本株――市場関係者に聞く

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2020/8/28 18:30

 安倍首相が辞任する意向を固めたと報じられ、28日の東京株式市場ではリスクオフムードが急速に高まった。日経平均株価は前日比で一時600円超値下がりし、終値も326円安の2万2882円となった。今後の注目点を市場関係者に聞いた。

基本的には米株次第

■みずほ証券・シニアテクニカルアナリスト 三浦豊氏

 安倍首相の辞任表明で波乱の様相を呈した日本株だが、基本的には今後も米国株睨みの展開が続くとみている。

 次期首相が決まるまでは様子見ムードが強くなる可能性もあり、投資家は上値を追いにくい。このため、日本株は米株の上昇にしばらく後れを取るかもしれない。もっとも、安倍首相の後任が誰になるにせよ、コロナ禍の緊急事態において経済や金融政策のかじ取りが大きく変わることはないとみられる。このため売り一辺倒に傾くことも考えにくい。

トランプ大統領との関係重要

■インベストラスト・代表 福永博之氏

 株式市場では安倍首相の後任をめぐり、日経平均の上値が目先重くなる可能性がある。マーケットにとって次期首相の人選で重要となるのは、トランプ米大統領との関係性だろう。

 トランプ大統領は自国第一主義を前面に出しており、日本も相応の財政的な負担を求められかねない。そうした状況の中で、安倍首相にそん色なくトランプ大統領との良好な関係を維持できそうな後継者はいまのところ見当たらない。大統領選へ向けたリスクとなる可能性がある。

 また、金融政策の先行きを見極める上で、日銀と足並みをそろえられるかも重要だ。

後任・菅官房長官なら影響小さく

■第一生命経済研究所・主席エコノミスト 永濱利廣氏

 安倍首相が辞任する意向だとの一報を受け、株式市場はリスクオフに傾いた。先行きの経済動向への警戒感が高まったことの表れだ。

 いわゆる「アベノミクス」は戦後最も経済を重視した政策で、雇用を中心に大きな成果を上げてきた。それだけに、後任への不安も相当なものだろう。安倍首相の路線に近いとみられる菅官房長官が次期首相になるケースが、株式市場への影響が最も小さいと考えられる。

 一方、岸田政調会長や石破元幹事長が選出されると、マーケットは緊縮財政を意識して株価の上値も重くなりそうだ。(可能性としては低いが)最悪のシナリオは、玉突き的に安倍首相の盟友の黒田日銀総裁まで辞めることだろう。

河野防衛相後任なら逆風限定的

■西村証券・チーフストラテジスト 門司総一郎氏

 安倍首相の後継者として有力視されるのは自民党の石破元幹事長や河野防衛相、茂木外相らだ。石破氏が選ばれると株式市場の不安心理が高まりそうだが、「新たな世代」を重視することを踏まえると河野氏が次期首相になるシナリオのほうが有力ではないか。

 石破氏は後任候補の中でただ1人、安倍首相と距離を置いている。このため、仮に引き継いだ場合は政策を踏襲しにくく、日銀の緩和姿勢の継続性も含めて不透明感が強い。また、準備不足とも考えられるため、投資家の不安感から日本株の上値は重くなる可能性が高い。

 もっとも、自民党内では次の衆院選対策の意味でも、より世代の若い後継者を推す動きが強まるだろう。このため、(63歳の)石破氏よりも、河野氏(57歳)のほうが有利とみられる。その場合はアベノミクス路線が大きく変わるリスクは小さく、株式市場への逆風も限定的になるとみている。

 一方、茂木氏も安倍政権で要職を歴任してきた経緯があるだけに有力候補と言える。河野氏同様に売り材料にはならないだろう。

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