海外株式見通し=米国、香港

【米国株】7~9月は堅調、ヘルスケアやテック企業も

 7~9月期決算の発表はおおむね堅調に推移している。仕入れコストの上昇、サプライチェーン混乱に伴う物流コスト高騰や入荷遅延、および人件費上昇が懸念されていた中、新型コロナウイルスをめぐる規制措置の緩和に伴う消費回復を背景に、企業は値上げによってコスト増を吸収することで対応を進めている。

 新型コロナワクチンや経口薬を中心としたヘルスケア企業も好調な決算を示している。19日に発表したジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>は、ワクチンのほかにコロナ禍の影響で低迷していた病院需要回復の恩恵を受けた。

 また、新型コロナ経口治療薬の開発で先頭を走るメルク<MRK>が11日に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請したほか、ファイザー<PFE>も9月にコロナ予防の飲み薬で大規模治験を開始した。さらに、FDAが新型コロナワクチンの追加接種、異なるワクチンの混合接種を認可したほか、米バイデン政権が5~11歳の子ども向けワクチン接種計画を発表するなど、ワクチン開発企業に多方面で将来的な持続的需要が続きそうな様相だ。

 また、EV(電気自動車)大手テスラ<TSLA>は、自動車大手他社が軒並み半導体不足で生産減少に見舞われる中でソフトウエア開発力の強みを生かして生産・販売台数を順調に伸ばしたことを受けて株価が過去最高値を更新した。一方、IBM<IBM>は事業の選択と集中を進める中で、スピンオフに伴う受注減やコア事業の伸び鈍化懸念で株価下落に見舞われたが、予想配当利回りで5%を超えてきた点は投資機会とみる余地がある。

 また、半導体メーカーのインテル<INTC>もアドバンスド・マイクロ・デバイセズ<AMD>などとの競争激化の下で市場シェア低下に歯止めが掛かる兆しが見えなかったとして同様に株価下落。バイデン政権による半導体支援法案とともにファウンドリー参入戦略に中・長期的期待が掛かろう。

【香港株】中国のEVメーカーの動向

 10月末に英国で開幕する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前に、中国政府が再生可能エネルギーなど非化石燃料の割合を「2060年までに80%以上」とする方針を発表。併せて同方針上で、20年の16%から25年に20%、30年に25%とする目標が明記された。これを手掛かりに香港や中国本土市場では新エネルギー関連株が買われ、EVの比亜迪(BYD)が10月25日以降、連日で上場来高値を更新した。

 世界的な半導体不足の影響を受けて競合の自動車メーカーが販売台数を減らす中で、同社は四半期ごとの推移でも今年1~3月以降、2四半期連続で前四半期比の販売台数を増加させた。また、10月11日には、半導体事業の子会社を深センの「創業板」に上場すると発表するなど、半導体部門の強化を図っている。

 一方で、スウェーデンのボルボ・グループや独ダイムラーの大株主でもあり、積極的な買収・提携戦略で知られる浙江吉利控股集団の傘下の吉利汽車(ジーリー・オートモービル)は昨年10~12月以降、3四半期連続で前四半期比の販売台数を減少させている。9月に低価格の新型EVを発表するなど巻き返しを狙っている。

時価総額が1兆ドルに達した米テスラも、中国でのEV販売が拡大している。主に4月の上海モーターショーでのトラブルの影響を受け、1~3月の約8万3000台から4~6月に約7万8000台に減少したものの、7~9月は約13万3000台と急増した。中国政府は異質なものが外から入ってくると全体の活力が高まる「ナマズ効果」をテスラに期待したとみられる中、競争相手として力を付けた中国EVメーカーの攻勢をはねのける底力を示していると言えよう。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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