<年末年始特集>特異だった2022年の相場、教訓生かし2023年の相場に備える

株式

2022/12/30 16:16

 2022年の米国株式市場は近年まれにみる厳しい状況だった。代表的な指数であるダウ工業株30種平均は21年年末から8.6%下落、さらに、より米国株全体を表す指数であるS&P500は同19.3%の大幅下落となった。もっとも、厳しいマーケットは米国だけではなく、同期間の日経平均株価は同8.9%の下落、中国の代表的な指数上海総合株価指数は同16.3%、欧州の動向を示すユーロストックス50は同11.2%の下落だった(株価はいずれも12月23日終値時点)。各株価指数の年間下落幅は、2008年のリーマンショック以来の大きさとなった。

―ロシアによるウクライナ侵攻、インフレ、そして利上げ―

 マーケットが不調だった主たる要因はロシアによるウクライナ侵攻と、これに端を発した、原材料価格の高騰によるインフレの進行、そしてそれを抑制しようとする各国中央銀行による金融引き締めだろう。

 ロシアによるウクライナ侵攻については、12月末現在も戦闘が一層激化していると伝わっており、停戦に向けた動きは見られない。専門家の間では、過去の紛争・戦争などと比較し、少なくともあと数年は戦闘が続くとの見方も出ており、23年も株式市場には暗い影を落としそうだ。地政学リスクのほか、核兵器使用への懸念、ウクライナやロシア発の資源などの供給は、不安定な状態が続くと予想される。

 FRB(米連邦準備制度理事会)は22年3月にこれまでのゼロ金利政策を転換し、22年中は7回の利上げを実施、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標をゼロ金利(0-0.25%)から、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で4.25-4.50%まで引き上げた。

 ロシアのウクライナ侵攻に端を発した資源価格の高騰はインフレ圧力を高めることから、各国の金融引き締め傾向は、23年も続く公算が大きい。一方で、米国については、一部でインフレ率の伸び鈍化が見られ始めている。今後も経済指標を注視する必要はあるものの、FF金利誘導目標のピークが見えてくれば、マーケットには好材料と捉えられる。

―「常識」あてはまらなかった22年の教訓を生かし、23年の相場に備える―

 2022年がまれにみる厳しい環境だったというのは、株価の下落だけではない。例えば、資産クラスの観点からいえば、安全資産といわれる債券価格も同時に下落した。米モーニングスターによれば、「1973年から2021年末まで、世界の株式リターンと米国債リターンの月間相関はマイナス0.02ポイントで、長年に渡り米国債の保有は分散効果をもたらしてきたといえる。しかし、2022年はこれまでとは異なり、相関が高い時ではプラス0.23ポイントまで上昇した」という。(相関はプラス1からマイナス1の間で変動し、プラス1の場合は2つの資産が同方向に動き、マイナス1の場合は真逆に動く。0は相関なし)。つまり、これまでは株式と債券価格の相関はマイナス(逆相関)となり分散効果に期待できたが、2022年はその「常識」があてはまらなかったのだ。

 この対応策として、米モーニングスターでは、「歴史が示す逆相関だけに頼るのではなく、『多様化するファンダメンタルズを探す』ことが重要」とする。

 例えば、2022年のセクター別リターンでは、エネルギーセクターだけが高パフォーマンスを上げた。ポートフォリオに債券ではなく、エネルギーセクターを入れておくだけで、大きな分散効果が働いた。

 このほかにも、米ドルは、FRBがECB(欧州中央銀行)などの各国中央銀行に先駆けて利上げを実施したことから、パフォーマンスが良好だった。ブラジル株式市場など「ニッチ」な市場の株式も高パフォーマンスを上げている。

 つまり、これまでの歴史通り、株式と債券の分散といった投資では、2022年は大きな痛手を被ったことになる。そして、より多くの資産クラスを組み入れることが、必ずしも分散効果につながるという誤解を避けることも示している。

 2022年の相場を見返し、教訓を生かすことが、先行き不透明感の強い2023年の相場を乗り切るヒントになる。

提供:モーニングスター社

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