アナリストの視点:インデックスファンドを選ぶ際に確認しておきたいトラッキングエラーとは

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2023/1/31 17:00

トラッキングエラーとは、ファンドとベンチマークとの乖離幅を計る尺度

 近年、コスト意識の高まりなどから資金の流入が続いているインデックスファンドは、ベンチマークのリターンに連動させることを目的とする。そのため、インデックスファンドでは、ベンチマークに連動した運用を行うことができているかが重要な確認事項の一つであり、トラッキングエラーを用いるなどして、どの程度ベンチマークと連動しているかを確認する。トラッキングエラーとは、対象期間において、ファンドとベンチマークのリターンがどの程度乖離していたかを示す指標であり、超過リターン(ファンドの月次リターン-対象指数の月次リターン)の標準偏差をとった値で算出される。つまり、各月末における超過リターンの差が大きくなるとトラッキングエラーも大きくなり、差が小さくなればトラッキングエラーも小さくなる(図表1参照=画像クリックで拡大画像にジャンプ)。そのため、インデックスファンドを選ぶ際はコストの他に、トラッキングエラーを確認することも重要なポイントとなる。

「日経225連動型」、「TOPIX連動型」内のファンドでは、長期になるほどトラッキングエラーの平均が小さくなる傾向に

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 では、実際のファンドではトラッキングエラーはどのような値となっているのか、モーニングスターが投資対象資産や投資対象国から独自に分類している類似ファンド分類のうち、「日経225連動型」、「TOPIX連動型」に属するインデックスファンドの1年、5年、10年の平均を調べた。2022年12月末時点における過去1年間のトラッキングエラーでは、「日経225連動型」の平均が1.08%、「TOPIX連動型」が1.39%となった一方、過去10年間のトラッキングエラー(年率)では、それぞれ0.89%、1.15%となり、いずれの分類にもおいても長期になるほどトラッキングエラーの平均値が小さくなった。(図表2参照=画像クリックで拡大画像にジャンプ)

分類内において最大のトラッキングエラーとなったファンド、最小となったファンドの差は長期になるほど縮小傾向に

 次に、「日経225連動型」内のインデックスファンドにおいて、各期間のトラッキングエラーが最も高かったファンドと、最も低かったファンドの差を調べたところ、1年トラッキングエラーでは0.23%の差であったが、10年トラッキングエラーでは0.15%の差となり、長期になるほどその差は縮小傾向となった。(図表3参照=画像クリックで拡大画像にジャンプ)

 また、トラッキングエラーの差がリターンの差にどの程度影響しているのか調べるため、過去10年間でトラッキングエラーが最も高かったファンドと、最も低かったファンドの2022年12月末時点における過去10年間のトータルリターン(年率)を比較したところ、その差は0.68%となった。トラッキングエラーの差は0.15%であったものの、10年のトータルリターンではトラッキングエラーの差異以上の乖離が生じているという結果になった。

 ベンチマークのリターンとの乖離が発生してしまう理由としてはいくつか挙げられる。まず1つ目が信託報酬等のコストである。類似ファンド分類「日経225連動型」内のインデックススファンドの信託報酬等をみると、信託報酬等が最も高いファンドは0.88%であるのに対し、最も低いファンドは0.05%となっており、およそ17倍もの差が生じている。同じ指数をベンチマークとするファンドであっても信託報酬等は様々であるため、各ファンドの目論見書でしっかり確認したい。2つ目は売買に係るタイミングやコストである。インデックスファンドの運用方法は、一般的な「完全法」に加え、「層化抽出法」、「最適化法」などといった運用方法があり、それぞれの運用方法によって売買のタイミングが異なる。そのため、異なる運用方法による売買のタイミング、売買に係るコスト等が差異を生じさせる要因となっている。

 以上のように、ベンチマークに連動させることが目的であるインデックスファンドは上記以外も含めた様々な要因によってベンチマークと乖離が生じるが、乖離要因をそれぞれ確認することは難しいため、リターンに着目したトラッキングエラーの値が重要となる。トラッキングエラーの値については、SBI証券にてファンドごとに確認できるため、購入予定、あるいは保有しているファンドについて確認し、上手く活用したい。加えて、インデックスファンドでは、月報において各期間におけるベンチマークとの騰落率の比較を記載しているファンドも多い。そのため、インデックスファンドを選ぶ際は、トラッキングエラーを確認することや、月報等でベンチマークとの騰落率の乖離幅を確認し、同じベンチマークを連動対象とする他のファンドと比較した上で連動性が高いインデックスファンドに投資を行うことが望ましい。

(市川 貴洋)

(写真:123RF)

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